yuhka-unoの日記

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pixivにおける「腐女子自重」の空気は、元々の同人界隈のものではなく、2chの影響説

集団投稿 - FC2

いわゆる「腐女子テロ」騒動について。上のリンクは、BL作品の集団投稿企画主催者のサイト。
まず昨年11月頃、pixivやニコニコ動画などの各種SNSサイトにおいて、利用規約に違反しているわけでもないのに、BL表現だけが、なぜか「自重」を求められるような空気があり、そういう空気に疑問を持った人たちが、「腐向け」などのタグを入れずに、日時を決めて集団で作品を投稿しようという趣旨の企画が持ち上がったところ、「はちま起稿」で「腐女子が集団テロを計画中」というタイトルを付けて取り上げられ、「腐女子が無差別にホモ絵をばら撒くらしいぞ!」という雰囲気で拡散していき、主催者のなりすましアカウントが作られる、pixivでBL絵と見せかけてクリックしたら死体画像が表れるものが投稿されるといった嫌がらせが相次ぎ、今年4月11日の企画実行当日には、Twitter上で「主催者は、その期間のBL投稿は参加者と見做すと言っている」というデマを呟く者が出て、その日のNHK「つぶやきビッグデータ」には、かなり大きく「腐女子」の文字が出た。しかし、外野でこれほど大騒ぎになったわりには、主催者の報告によれば、当日pixiv上で投稿した作品については、特に何も問題は起きなかったという。
以上が、この件について私が知っているだいたいの大まかな経緯である。
ちなみに、「BL」とは、ものすごくざっくり説明すると、主に女性に愛好者が多い、男同士の恋愛を描いた作品である。よく誤解している人がいるのだが、「BL=エロ」でも「BL=二次創作」でもない。BLは全年齢のものからR18のものまであり、一次創作もあれば二次創作もある。二次創作の中にも、公式が二次創作を許可しているものや、著作権が切れたものもある。
 
さて、今回の出来事で私がすごく疑問に思うのは、「pixivやニコニコ動画において」BL表現を自重する必要があるのか、ということだ。pixivもニコ動も自由な創作の場で、リアルに例えるなら、オールジャンル同人イベントや同人投稿雑誌のようなものだろう。
ネット普及以前の同人界隈では、そんなに801やBLのみが、他ジャンルに遠慮して隠れなければならないような空気はなかった。一般人(オタクじゃない人)に対しては「バレちゃいけない!」と隠れるようなところは確かにあったが、そこは腐女子に限らずオタクは皆そうだった。アニメディアファンロードといった雑誌でも、投稿者は女性が多かったし、腐女子は自重なんてしていなかった。そういった雑誌を持っていることを隠している人は多かったけれど。
つまり、腐女子が隠れていたのは、あくまでも同人界隈の外、一般社会に向けてであって、同人イベントや同人系の雑誌などの場では、全く隠れていなかった。だから、ニコ動やpixivみたいな場で腐女子が自重を求められるのは、すごくおかしなことだと思う。
 
私の認識としては、一般社会における腐女子は、まず2005年の「電車男」で男性オタクの存在がマスメディアで取り上げられ、その後腐女子が世に知られる、という流れで、世間に認知されるようになり、2007年前後の時点で、ある程度存在が知られてしまったという気がする。その頃までは、マスメディアで腐女子も含めたオタク的なものが面白おかしく取り上げられることも多かったが、やがてそれも飽きられた後、「かなりの一大文化らしい」「海外にも広がっているらしい」と認識されて、「クールジャパン」とか言われて、お偉いさんたちがオタク文化でお金儲けしようとしているのが現在、ということになると思う。
最近では、同人の世界が面白おかしく取り上げられることも、だんだん少なくなってきて、コミックマーケットが開催されていることが朝のニュースになって、普通にコスプレイヤーさんたちがテレビ画面に映され、アナウンサーが「こういったものも、今や日本の一大文化ですからね」とコメントするような時代になった。その代わり、「同人は儲かる」といった誤解もあるようだけれど。
というわけで、2014年現在は、腐女子の存在が、ある程度一般社会に知られてしまった後の世界なのだと思う。ある程度面白おかしく取り上げられ、ある程度飽きられた後。だから私は、もうそれほどBL表現とかで隠れなくても良いんじゃない?という気がしている。もちろん、激しい性描写はどんなジャンルでもゾーニングは必要だけど。
 
一方、同人界隈の流れとしては、ネット普及以前は、どのジャンルのオタクたちも地下深く潜っていたのが、ネットの普及とともに隠れきれなくなり、ニコ動、pixivときて、オタクがカジュアル化し、裾野が広がったという流れがあると思う。
それと共に、2ch的な「腐女子きめぇ」「女は出て行け」という空気が、本来オールジャンル創作の場であるはずのニコ動やpixivにまで持ち込まれるようになり、なぜか同人界隈の中ですら、BL表現を自重しなければならないように思っている人が増えてしまったのではないだろうか。
つまり、一般社会に向けてではなく、自由な創作の場であるはずのニコ動やpixivの内部ですら、BL表現を自重しなければならないというのは、特にネット普及以前から腐女子たちが守ってきたものなどではなく、実は、ここ10年ほどで形成された2chの空気でしかないのでは、と思うのだ。
そもそも2chだって、運営は誰でもいらっしゃいなスタンスだったのだが、まるで公園のジャングルジムを占領する子供のように、「腐女子は隠れろ」「女は出て行け」な空気が形成されてしまって、その2ch的な空気を、本来自由創作の場であるニコ動やpxivにまで持ち込んでくる人がいる、という感じがする。2ch的な価値観に浸かってしまうと、ネットのどこでも2ch的な価値観が通用するものだと思い込んでしまうところがあるのかもしれない。
だが、そもそもこういった同人創作活動をする人たちは、ずっと女性の割合が多かった。ニコ動やpixivを利用しているのに「腐女子は見たくない」などと言うのは、オールジャンル同人イベントに来て「腐女子は見たくない」と言うようなものだ。実際、集団投稿の主催者さんも、pixiv上では「腐向け」などのタグをつけずに投稿しても、何も問題は起こらなかったと仰っているのだから、騒ぎになっているのは主にpxivの外で、pixivにおいては、特にBL表現ということで自重する必要はないということなのだろう。

男女比については、2010年8月のコミックマーケット78での調査[20]によれば、一般参加者では男性64.4%、女性35.6%と男性の比率が高く、サークル参加者では男性34.8%、女性65.2%と女性の比率が高い。一方、2008年2月に準備会が公開した資料「コミックマーケットとは何か?」によれば、一般参加者は女性57%、男性43%、サークル参加者は女性71%、男性29%であり、当時の準備会は「世の中の認識とは異なり、女性の参加者が多い」と結論づけた。また、2004年8月のコミックマーケット66でのコミック文化研究会(九州大学助教授・杉山あかし)と準備会による試験的な計測では、男性がやや多いかも知れないという結果であった。
コミックマーケット - Wikipedia

 
一方、中国ではBL小説を執筆したことで、女性が少なくとも20人は逮捕されるという事件があった。

 当局は特に、男性同士による同性愛を描写した二次創作に注目している、と『The Daily Dot』は指摘している。これには、日本の「やおい」や「ボーイズラブ」も含まれる。

 同性愛を描写した二次創作が、普通のロマンス小説よりも過激であることは、まずない。しかし、中国当局は、同性愛をテーマにした二次創作を、過激なネットポルノとして取り締まっている。
中国当局、BL小説執筆で女性20名を逮捕  “同性愛差別”と中国ネット上で批判も | ニュースフィア

日本でも、2008年、堺市図書館が「市民」の声を受けて、現行の法律や条令でも「18禁」に当たらないBL図書を、18歳未満の利用者への貸し出しを制限する措置を取るなどして、問題になったことがある。私はこの件がきっかけで「図書館の自由に関する宣言」を知った。
 
何にせよ、男と女がキスしている表現を隠さなくても良いのなら、男と男がキスしている表現だって、隠さなくても良いはず。BL表現だからという理由で自重する必要はないというのは、そういうことだ。
 
 
今回の集団投稿に関する記事へのリンク。

【メモ】今、腐女子を考える。集団投稿企画に賛同する「自重しない腐女子」とは【1】 | Fujo2

アンチ腐女子を煽動するアフィブロガーと、ゴキ腐リの提唱者「罵詈」 - hompig

オタク女叩きはアフィブログの飯の種 - hompig

第42回 “腐女子テロ”とはなんだったのか〜自重ルールの5つの理由|2CHOPO 読みもの