yuhka-unoの日記

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「オシャレ=チャラ男&キラキラ女子=バカ」という偏見、あるいはオタクとファッションについて

「オシャレ=チャラ男&キラキラ女子=バカ」という偏見は、一般人のオタクに対する偏見と同じ

自分で言う、勉強熱心な方だから興味があればやってた。しかし、
ファッション誌を見ることもかっこ悪いし、
チャラいやつと会話するのもかっこ悪いし、
服とワックスとノリの良さキラキラ女子はバカっぽく見えるし、
…と、完全にバカにしてた。


「そんなの、偏見だ」
と言われるかもしれない。
だが、人間は往々にして「かっこいいと思ってるもの」「他を圧倒する何かしらのカリスマの意見」しか自分の中に響かないようにできている。


だが、僕の中で「僕よりもオタクで、僕よりもオシャレでモテて、好感が持てる人」が現れたのは、つい最近のこと。
それまでは、10年ほど「何がすごいかわからないし、そもそもバカだからああいうことでしか楽しめないんでしょ?」ぐらいには斜に構えていた。
オシャレに無関心な男に、母親や彼女が服を買い与えても無意味!!

あー、こういう偏見あるよねぇ… でも、ファッションもたいがい趣味でオタクな世界なので、「オシャレ=チャラ男&キラキラ女子=バカ」という偏見は、一般人のオタクに対する偏見や、年長者の若者フォビアと同じなんだよなぁ…
これ読んで、たぶん、オタクについてよくわからない一般人も、たまにテレビで見かける典型的なオタク像とかを見て、 「何がすごいかわからないし、そもそもバカだからああいうことでしか楽しめないんでしょ?」ぐらいに思ってるんだろうなぁ…と思った。人って、自分にとって理解できないことに夢中になっている人を「バカ」と決めつけたくなりがち、ということなんだよね。
「オシャレ=チャラ男&キラキラ女子」だと思うのは、「音楽=最近のCD売上上位のJ-POP」だと思うようなもの。音楽もファッションも、それこそ無限にジャンルがある。そういうことがわかってない人ほど、「結局、女のオシャレって、男にモテるためなんでしょ?」とか「日本人には黒髪が一番!わざわざ茶色に染めるなんて、西洋人に笑われるぞ」とか言うよね。西洋人だって染めてるんだけど。
ちなみに、「結局、女のオシャレって、男にモテるためなんでしょ?」って思ってる人のことを、「クジャク系男子」と言うらしいですよ。

「男心わかってないな〜w」なクジャク系男子が苦手 - 引きこもり女子の上京ブログ


初心者は「ギターの弾き方」みたいな本を買おう

とはいえ、良い服だけ持ってても無意味というのはわかる。いい楽器持ってても演奏できないのと同じ。よく、「ファッション初心者はファッション誌を読んでも、どうしたら良いのかわからない」と言うけれど、音楽情報誌を読んでも楽器を演奏できるようになれないのと同じなんだよね。初心者は「ギターの弾き方」みたいな本買いましょ。
今現在、男性向け「ギターの弾き方」本といえば、MB氏の『最速でおしゃれに見せる方法』が有名だけど、1冊、私が個人的に良いんじゃないかと思っているファッション指南書を挙げるとすれば、こちら。年齢層的には、アラサー以上か、あるいは、私みたいに、20歳の頃から父と一緒にいると「奥さんですか?」と言われていたくらい大人顔な人向けかな。とはいえ、全世代に共通するファッションの「基本のキ」「守破離の守」が書かれているので、若い世代にとっても十分参考になると思う。どうせ若者も数年経ったらアラサーだしね。
この本で提示されているスタイルは、人によっては物足りなさや地味な印象を受けるかもしれないけど、まぁ、何をやるにしても、基本・土台といったものは地味なもんだと思う。「チャラい格好はしたくないけど、オシャレに見られたい」という人にはオススメ。
尚、この本に書かれている内容の一部は、こちらのサイトから読めるようです。

できれば服にお金と時間を使いたくないひとのための一生使える服選びの法則


男性服の基本はスーツだと思う

多くのおしゃれオンチな人にとっては、「おしゃれな男性=チャラ男」というイメージなのかもしれないけど、思春期にジェレミー・ブレット演じるシャーロック・ホームズを、その後にフレッド・アステアを見てしまった私にとっては、「おしゃれな男性=スーツ系の服を格好よく着れる人」というイメージだった。
それから、弟が就職活動でスーツが必要になった時、うちは母子家庭で、父親もスーツを着る職業ではなかったため、誰一人としてスーツの着方がわからないという事態になり、私がスーツについて色々調べてみたという出来事があった。その時、ジャケットの一番下のボタンは外しておくとか、ビジネススタイルの時に履く革靴とカジュアルスタイルの時に履く革靴の違いとか、ワイシャツはもともと下着で、ジャケットを汚さないように、襟や袖をジャケットから1cm〜1.5cm出しておくとか、スネ毛が見えない長さの靴下を履くとか、ネクタイの結び目の下には窪み(ディンプル)を作っておくとか、そういうスーツのルールを初めて知った。
また、スーツのジャケットには、背中に一つ切り込みが入っているもの(センターベント)と、両サイドに二つ入っているもの(サイドベンツ)とがあるけど、これは、昔の西洋の紳士たちが、馬に乗ったり腰に剣を吊ったりしていた時代の名残だとわかって、「ああ、スーツも、着物と同じで、西洋の衣服の歴史の延長線上にあるものなんだなぁ」と思ったりして、面白かった。


で、こういうスーツの着方って、実は案外知らない人多いよね。バンクーバー五輪の時、国母選手の腰パンが問題になったけど、彼を叩いていた人のうち、一体どれだけの人が、ちゃんとしたスーツの着方を知ってるんだろうな、と思った。私の観測範囲だと、おしゃれな人ほど、こういったスーツのルールをわかっているんだよね。一方、「近頃の若者はこんな格好しやがって!けしからん!」みたいな人ほど、サイズの合ってないダボダボのスーツを着ていたり、足首から上はビジネススーツなのに、履いている靴はギョーザ靴とか、おかしな着方になってたりするよ。こういう人が言いがちな「茶髪禁止」は、普通に人種差別だからね。学校の校則とドレスコードは別物だから。


洋服の場合、男性服のおしゃれって、ファッション誌に載ってるチャラ男よりも、スーツを格好よく着るのが基本って気がするんだけど、どうなんでしょうね? スーツを着るとおかしなことになるチャラ男はけっこういるけど、スーツを格好良く着れる人で私服がダサい人は、あんまりいないと思う。よく「お父さんの休日の私服がダサい」って言うけど、そういうお父さんは、大抵スーツ姿もイマイチなんじゃないかな。私はモテについてはよくわからないけど、モテを目的にするにしても、チャラ男が嫌だという女性はよくいるけど、スーツ姿が格好いい男性が嫌だという女性の声は、あまり聞いたことがない。
あと、「スーツ=制服・堅苦しい」みたいなイメージ持ってる人は、「ツイードラン」「サプール」あたりで検索してみてね。スーツもかなり幅の広いジャンルだから。


創作系オタクに必要な、資料・考察としてのファッション

オタクにオシャレ知識は必要ないのかって言うと、そうでもないと思う。特に、イラストや漫画を自分で描くタイプのオタクの場合は。

id:whkr エロ漫画家の田中ユタカも、「漫画家の隠れ必修科目は、ファッションと建築だ」と言っていた。
はてなブックマーク - 男性漫画家の描く

これは本当にそうだと思う。建築は背景描くのに必要だし、ファッションは人物描くのに必要。例えば、昔読んだ漫画で、「某国からお忍びで来たお姫様」という設定なのに、着ている服が庶民レベルで安っぽいので、全然高貴な感じがしないぞ…と思ったことがあった。
赤松健氏も、『ラブひな』の頃は、女性キャラのファッションがイマイチだったけど、『ネギま!』になった時に、女生徒たちの私服描写が格段に向上したので、「おおっ!」と思った。ちゃんと、その時代の女の子が着ていそうな服になっていた。そのキャラがどういう系統のファッションが好きなのか、あるいは、どの程度ファッションに興味を持っているのかは、キャラクターを掘り下げる上でも重要だと思う。
こういう場合、ファッションについて調べるのは、ニューヨークの町並みを描こうと思ったら、ニューヨークの町並みを調べたり、江戸時代が舞台のものを描こうと思ったら、江戸時代の風俗を調べたりするのと、同じなんだよね。


それにしても、ネットが普及した現代は、資料が探しやすくなったよね。私が中高生の頃は、ネット環境なんてなかったし、資料も高くてなかなか買えなかったから、図書館で借りてきた本のコピーを取ったり、新聞の折り込みチラシについてくる家具の広告を背景の参考にしたり、タダで手に入る通販のカタログ誌を資料にしたりしながら、漫画描いてたよ…


服飾史の視点から見たファッション

この地球上の人類の服装が、どのように変化しどのように今の形になったのか、という視点からファッションを捉えてみるのも、これはこれでとても面白い。
例えば、日本と朝鮮半島の民族衣装の変遷を見てみると、古墳時代頃まで遡れば、上流階級の女性たちの格好がとてもよく似ていることがわかる。そして、その後の服装の変化を辿ってみると、まるでひとつの生物が枝分かれして進化していくように、一方はチョゴリ、もう一方はキモノになっていく様子を見ることができる。
Twitterにある「民族衣装bot」とか、見てると面白いよ。

民族衣装bot

で、こういう視点からファッションを捉えてみると、一番最初に述べた「オシャレ=チャラ男&キラキラ女子=バカ」「結局、女のオシャレって、男にモテるためなんでしょ?」などといった認識が、実に狭い世界のものだということがわかると思う。地球上には、それ自体で学問のジャンルとして成り立つくらい、本当に多様な服飾文化があるんだからね。


新装改訂版 日本のファッション (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)

新装改訂版 日本のファッション (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)

明治初期〜2010年代前半までの日本のファッションの変遷についての本。イラストを眺めているだけでも楽しい。プラス、この手の本の良いところは、流行を客観的に眺める視点が持てることでもある。


ファションは所詮趣味(ただし例外あり)

服屋のそれもセレクトショップの店員なんてものは本当におしゃれが好きで、ファッションが好きな人だ
そういう人は他の人のファッションを馬鹿にしたりなんかしない


「おしゃれは自己満足」ということがわかっているからだ


自分のファッションが優れていることを示すために他のファッションを馬鹿にするような奴は勘違いファッションオタクか、勘違いおしゃれ気取り大学生くらいのものだ
おしゃれな服屋に入りずらいって人へ - 今日はヒトデ祭りだぞ!

これは本当。私の考えでは、「身だしなみ」は社会性やマナーの範疇だけど、「オシャレ」「ファッション」は趣味の問題。音楽や漫画と同じで、興味がなければやらなくても良いし、興味が沸いたら何歳からやっても良い。
ただし、二つほど例外があると思う。一つは、ファッションが仕事の人。これは言うまでもない。もう一つは、経営者、個人事業主、芸能人、婚活中の人など、他人に自分を売り込む必要がある人。こういう人にとっては、ファッションは商品のパッケージデザインと同程度には重要だと思う。
まぁ、確かにファッションマウンティングする人って多いけど、そこは、オタクの中にもオタク知識でマウンティングする人がいるのと同じなので、結局、こういう人はどこにでもいるってことなのかな。


おまけ

映画『コンチネンタル(The Gay Divorcee)』より『A Needle In a Haystack』。
フレッド・アステアが着替えながら踊ってみた。
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