yuhka-unoの日記

旧はてなダイアリー(http://d.hatena.ne.jp/yuhka-uno/)からの移行

家事能力とアダルトチルドレン―妻は夫に家事を教えて当たり前ではない

―― 一方、共働き家庭では、家事ができない夫に対して妻が家事を教えてあげるのは当たり前ですよね。だから妻のダメ出しを、ことさら問題視する必要はないのではありませんか。

田中:ですが、「女性が当たり前にやっていることなのに、どうして男性はできないの…」という意識でダメ出しするだけなら、そこでおしまいになってしまいます。例えば仕事では、新人に「そんなこともできないの!」と叱ったら、言われた新人は萎縮してしまいますよね。

 夫が家事ができなくても、きつい言い方や上から目線での話ではなく、褒めてあげつつ、優しく仕事を教えるつもりで接するほうが良いと思います。男性が喜ぶ「さしすせそ」はご存じですか。

―― 知りません…。

田中:「さ」は「さすが」、「し」は「知らなかった、そんなやり方があるんだ」、「す」は「すごい」、「せ」は「先輩だから」、「そ」は「そうなんですか」。男女平等という観点からはどうかと思いますが、現実的には、女性が下手に出ると男性は喜んで受け入れてしまいます。

 理想は「家事を平等に分担するのは当たり前なんだ」というところまで男性の意識を持っていきたいですが、現実的な戦略として、夫婦が家事をうまく分担するには上記のような手を使って褒めていくのは「あり」だと思います。
妻よ、家事能力の低い夫を叱らないで  :日本経済新聞

 
この手の話では、いつも妻が夫に家事を教えてあげる話になるのだが、まず、妻は夫に家事を教えてあげるのは当たり前ではない。女性の中にも、たまに家事を全くやってこなかった人はいるが、夫が教えてくれるわけではないケースのほうが多いだろう。そもそも、夫も家事能力が低い場合が多いからだ。
では、家事を全くやってなかった女性はどうするのかというと、たぶん、結婚という話が持ち上がった時点で、「やばい!私家事全然できない!」と思って、「花嫁修業」というやつをするんじゃないかな。そして、その場合は、家事を教わる相手はまず自分の親であり、親に教わることができない場合は、本なりネットなり料理教室の先生から教わろうとするものだろう。なので、家事を全くやってこなかった男性も、結婚前から「花婿修業」をすれば良いと思う。
問題は、なぜ男性は、結婚という話になった時点で「やばい!俺家事全然できない!」と思って「花婿修業」をしようと思うのではなく、「結婚してから、妻に教えてもらおう」と思ってしまうのか、ということだ。
 
家事というのは、まず第一に、自分で自分の世話ができるようになる、つまり、自立して生きていくためのスキルであり、子供ができた場合は、子供を育てていくためのスキルだと思う。なので、家事能力を身に付けることができなかった人は、常に家事を誰かに依存して生きていかなければならなくなる。家事を他者に依存するしかない人は、家事をしてくれる人、大抵は母親か妻ということになるが、その人がいなければ生きていけない状態になってしまう。
かつては、女性に教育を受けさせないことによって、女性は男性に依存して生きていかざるをえなくなり、男性に家事を教えないことによって、男性は女性に依存して生きていかざるをえなくなるという、共依存社会だったのだろう。それが当たり前だった時代は、男性の女性に対する家事依存が表面化しにくい時代だったのだろうが、それでも、夫が退職して依存の均衡が崩れたり、妻のほうが先に介護が必要になったり亡くなったりして、依存できる相手がいなくなった時に、表面化してしまう。一方、共働きが当たり前の現代においては、結婚生活を始めた時点で、問題が表面化することになるのだろう。
 
子育ての目的が、子供を自立して生きていける状態にすることなら、私は、現代において、子供に家事を教えないのは、虐待と言っても良いと思う。これは、親から不適切な養育をされたアダルトチルドレンの問題とも重なってくる。アダルトチルドレンは、自分の意思で自分の人生を選択して生きていくことができなかったり、愛情不足で育ったために自己肯定感が十分でなかったり、人とのコミュニケーションのとり方に困難さを抱えていたりと、どこかの面で、自立して生きていくために必要なことが身についていなかったりする。そのため、無意識のうちに他者に依存したり依存されたりしてしまう。私は、親から家事を教わってこなかった人も、ある種のアダルトチルドレンなのだと思う。
現状起きている問題は、親が息子に家事を教えなかった尻拭いを、妻がさせられているという構造である。アダルトチルドレンの責任がまず親にあるように、家事を教わってこなかった人の責任も、ます親にある。
 
では、アダルトチルドレンの人が、自分がアダルトチルドレンだと気づいた時にどうすべきなのかというと、「自分で自分を育てようとする」ということだ。そのために、本を読んだりネットで調べたり、精神科医やカウンセラーの助けを借りたり、自助グループに行ったりする。アダルトチルドレンに対する受け入れや理解は絶対に必要だと思うが、その「受け入れ」や「理解」とは、その人の親代わりになってあげることではない。
大人になってからは、誰かに無償で自分の親代わりになってもらえることなんて、そうそうない。大人の世界では、時間や労力を割いて大人を育てるのは、プロの仕事だ。たまに、親的な愛情を与えてくれる人が現れることはあっても、それはあくまでもその人の好意で行われることであって、「当たり前」のことではないのだ。
自分が親から必要なものを与えられなかったということ自体は不運だが、だからといって、他人に対して、「私は親から必要なものを与えられてこなかったんだから、あなたは私の親代わりになってくれて当然でしょ」などという態度を取っては、相手にとってはとてつもない負担になる。それは依存であり、虐待の連鎖だ。もし親代わりが必要なら、他人に無償かつ無制限に求めるのではなく、カウンセラー等のプロに頼るのが健全だ。もっとも、カウンセリングを受けるにしても、「自分で自分を育てようとする」ということが根底にない人は、いつまでたっても自立に向かってはいけないのだが。
 
というわけで、家事能力を身に付けるにしても、私は、「自分で自分を育てようとする」という意識がない人は、本当の意味で家事の担い手にはなっていけないのではないかと思う。妻が夫を「合コンさしすせそ」のテクニック等で褒めて持ち上げても、一時的には家事をするかもしれないが、結局、褒めなければやらない小学生レベル止まりにしかならないのではないだろうか。対等な家庭運営のパートナーとして家事を担うようになってくれるのかどうかは、疑問である。
家事を教わってこなかった夫がやるべきことは、妻に親代わりになってもらおうとすることではなく、アダルトチルドレンの人たちがそうするように、まず、本を読んだりネットで調べたり、料理教室の先生などプロの助けを借りようとすることではないだろうか。多くの妻が苛立っているのは、夫に家事能力が身についていないことそのものよりも、「自分で自分を育てようとする」という態度を見せず、妻に依存しようとする態度を取ることだと思う。それは、アダルトチルドレンが育ってきた境遇には理解を示せても、依存されて親代わりになってあげることまでは引き受けられないのと同じだ。
夫にやる気があるのなら、家事を教えても良いという妻は、沢山いると思う。けれど、「基本的には自分でできるようにならなければいけないものだ」と思っている人と、「君が教えてくれて当然だろ」と思っている人を教えるのとでは、大きな違いがあるだろう。
 
だいたい、他人に家事のやり方を教えるのは、すごい負担なんだよ。よくネット上では、IT機器の使い方がわからない親に使い方を教える時の悲哀や苦労話があるけれど、大の大人に家事を教えるのは、あれに近いものがある。竹信三恵子氏が、家事労働にかかる負担や時間がないことにされている・軽視されていることを「家事労働ハラスメント」と言っていたけれど、妻が夫に家事を教える負担や時間がないことにされる・軽視されるのも、「家事労働ハラスメント」の中に入ると思う。
私は未婚者なので、夫婦間のことについては経験がないが、私が育ってきた家庭では、母が、私には家事を仕込んでも、なぜか弟には一切家事を教えなかったので、私は「今の時代に、家事ができない男なんてありえない」と思って、なんとか弟に家事を教えようとしてきた。これはあくまでも私個人の経験に過ぎないが、結果としては、叱ってみせようが、優しく言って褒めてみせようが、弟は家事の練習をしようとはしなかった。もっとも効果があったと言えるのは、突き放すこと、要するに「家事ボイコット」だ。家事をやるようになるかどうかは、結局、必要に迫られるかどうかだったのだ。「叱らずに、優しく教えて」が通用するのは、本人がやる気になってからの話である。
そもそも、仕事のやり方だって子供の育て方だって、義務教育では習わない。それでもできるようになるのは、必要に迫られるからである。というわけで、「合コンさしすせそ」を発動させるよりも、「家事ボイコット」を発動させて突き放したほうが、遥かに効果が高いという場合だってあるだろう。それでも家事をしない場合は、その人は一生家事をしないであろうから、妻のほうが、これから先、本当にこの人と一緒に家庭運営をやっていけるのかということを、考え直す必要に迫られるんじゃないかな。
 
というか、この手の話って、夫に家事をさせるテクニックとか、夫に家事をさせることに成功した妻の話ばかりが取り上げられるけど、実際には、夫が家事をやるようになるかどうかは、妻側の働きかけよりも、夫の資質によるところが大きいのではないだろうか。虐待関係にあった親子が、最終的に良好な関係を築き治せるか、子供が親と縁を切ることになるかは、子供側の働きかけよりも、親の資質によるところが大きいのと同じで。結局のところ、「やらない人はやらない」というのが現実なんじゃないかと思う。
というわけで、夫に家事をさせることに成功した妻の話だけじゃなくて、共働きなのに夫が家事をしなかったことが原因で離婚した妻同士の語らいとかもあったら、面白いんじゃないかな?(笑)

続々々・「ダサピンク現象」について―ピンクは「無難な色」なのか?

north_god うむ、男性スーツで紺色が無難と言っちゃうのと同じで色彩が貧しすぎる。夏は夏色、冬は冬色というのもやめてほしい。春夏秋冬色の相性は人それぞれ違う
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/yuhka-uno/20141205/1417777562

続・「ダサピンク現象」について―だから、「ピンクが嫌い」って話じゃなくてさぁ…』の記事についていたこのブコメを読んで、「ピンクって、無難な色なのかなぁ…?」と思ってしまった。男性のビジネススーツの場合、消費者に紺色が無難だと認識されているのは、確かにそうだと思う。ただ、女性の場合、ピンクは無難な色なのだろうか。「何色が好き?」というアンケートだけを見れば、女性のピンク人気は高いので、一見すると「女性向けはピンクにしておけば無難」と思ってしまうのかもしれない。しかし、当の女性たちが「ピンクは無難な色」だと考えているのかというと、それは大いに疑問だと感じる。ピンクは、むしろ「難しい色」だと考えられていることが多いような気がするのだ。女性たちが「ピンク色にしておけば無難」だと考えるものは、口紅くらいではないだろうか。それでも、「私はオレンジ系のほうが無難」だと言う人はいるけれど。
 
マーケティング的なことを言うなら、「何色が好き?」という質問に答えたアンケートの結果よりも、実際に女性にどれだけピンク色の商品が売れているのかというデータのほうが、信用度が高いような気がする。「何色が好き?」という質問に「ピンク」と答えた女性が、実際にバッグを買う時には、茶色や紺や黒を選んでいるというのは、よくあることだからだ。
どうにも、「好きな色」と「実際に選ぶ色」は、必ずしもイコールではないような気がする。もしも女性たちが、アンケートに答えたとおり、好きな色だけで服を選んでいたら、街中で見かける女性たちのピンク比率は、もっと高いものになっているはずだ。自分の持ち物となると、「好きな色」よりも「使い勝手が良い色」のほうが多くなるというのは、あると思う。それに、色だけで選んでいるわけじゃないしね。
 

これは私も考えていた。自分の経験だと、幼児期はこの3つの区別をつけていなかったと思うが、年齢が上がって客観性を身に付けるにつれて、この3つは分かれてくると思う。色もそうだが、形もそうだ。私は、丸っこくて可愛いものは、好きか嫌いかと問われたら、好きなほうだと思う。小動物が好きなのと同じで。でも、自分で身に付けるには、丸っこくて可愛いものは似合わない。ぬいぐるみや動物のように、「自分でないもの」として愛玩する対象と、身に付けるものや持ち物のように、「自分の一部」としてものを持つ場合は、選ぶ基準が違ってくる。
「ピンクは好きですか」という質問に「好きです」と答えたとしても、「部屋の壁紙や家具をピンクにしたいですか」「ピンクの車を持ちたいですか」という質問になると、「いや、それはちょっと…部屋の壁紙はオフホワイトで、家具は木目にしておきたい」ってなる人は、けっこう多いんじゃないかな。
 
続・「ダサピンク現象」について―だから、「ピンクが嫌い」って話じゃなくてさぁ…』の記事中でも、具体的に「丸っこくってピンク色っぽいかわいい車」が似合いそうな女性は誰かとか、自分に似合う、大人っぽくて落ち着いたピンク商品が少ないので、自然と買わなくなるとか、「好き」だけじゃなくて「似合う」でも話をしているんだよね。
ホンダNシリーズの話に戻ると、「丸っこくってピンク色っぽいかわいい車」は、無難ではなく、むしろけっこう尖ったデザインの車だと思う。私はきゃりーぱみゅぱみゅでも道重さゆみでもないので、もし自分の車を持つとしたら、無難に白とか紺とかを選びそうだ。性能と軽さに配慮した女性向け工具についても、柄の部分で無難なのは、ピンクではなく、普通の工具と同じ木製にしておくことなんじゃないかと思う。

 
この件を考えるにあたって、試しに母に「何色が好き?」と聞いてみると、「赤かピンクかな…」という答えが返ってきた。なんと母はピンク好き女子だったのだ。しかし、実際に母が持っている服や靴やバッグは、「ピンクもある」という程度のもので、黄色系や茶色系のもののほうが多いくらいだ。赤も、それほど多いというわけではない。
母に「もし車を持つとしたら、何色にする?」と聞いたところ「白」という答えが返ってきた。理由は「濃い色だと汚れが目立つし、白なら上品で、妥当」だそうだ。ピンクについては、「ピンクってガラじゃないしな〜」だそうだ。
母が現在持っている携帯電話はピンクだが、2〜3種類しかない中で、仕方なく選んだのだという。「もし好きな色を選べるとしたら、何色がいいか」と聞いてみたところ、「案外、赤とかが良いかも」と言った。「目立つ色だと、鞄の中で見つけやすいから」という理由だそうだ。同じ理由で、黒だけは避けておいたらしい。そして、今持っているピンク色の携帯は気に入っていないらしい。「だって、それ、おばさんくさいやろ?」と。どうやら母の中では、今の携帯はダサピンクらしい。
これはあくまでも一例だけど、でも、わりとリアルな女性の声だと思う。
 
ことは、「ピンクが好きならピンクを選ぶだろう」という、単純なものではない。ピンクは嫌いじゃない、それどころか好きだったとしても、ピンクのものを買うわけではなく、選ぶものによってはピンクを避けるということすらある。その辺りを理解していないと、「ピンクを選ばない=お前はピンクが嫌いなんだろう」みたいな勘違いをしてしまうのかもしれないが。逆に言えば、普段ピンクをあまり身につけない女性でも、実はピンク好きだったりするかもしれないわけで、もしそうだったら、「お前はピンクが嫌いなんだろう」って言ってしまうのは、すごく失礼だよね。
 

大人気だけど好き嫌いの激しいピンク色と
そこそこ人気だけど嫌いな人はほとんどいない水色
女性がピンク色を好むと思われがちですが水色もすごく好まれている色です。しかもピンクは嫌う人も多いのですが水色はダメって人が圧倒的に少なかったりします。
人気色!色のアンケート調査 - 色カラー

「ピンク」は、好き嫌いの好みが激しく出る色です。アンケートに答えていただいた方に女性が多かったというのが原因と思われますが、嫌いな色でもベスト3入りしています。
好きな色嫌いな色の解説 | Best Color Room ALICE | Best Color Room ALICEーパーソナルカラー診断の専門店

 
〔追記〕

続きを書きました。
「ダサピンク現象」番外編―ターゲットの最大公約数から大幅にズレているのが「ダサピンク現象」である

続々・「ダサピンク現象」について―上層部のおっさんの「無知の知」という問題

「なぜ女性向けのプロダクトにはピンク色が多いのか」という怒りにも似た疑問について考える - ココロ社

こちらの記事を読んで、「恋愛モノだろうがイケメン出そうが、ドラマとして面白くないものは人気出ないよ」という話に対して、「でも実際、女性には恋愛モノが人気なんだよ」と返されたような的外れ感を感じている。

このtweetを見るに、最初の記事「残念な女性向け商品が作られてしまう『ダサピンク現象』について」だけでなく、続きの「続・『ダサピンク現象』について―だから、『ピンクが嫌い』って話じゃなくてさぁ…」も読んで、

女の人が生まれつきピンク色が好きなのかどうかについては、男が生まれつき黒が好きなのかどうなのかの話と同様、ここではさほど重要ではない。仮にそれが、幼児期に刷りこまれた嗜好だったとしても「こんな悪趣味な色のお召し物を主体的に身に着けてしまうほど男性社会に飼いならされてしまうなんて……かわいそうに!」などと憐れむのはお門違いなのであった。
いっぽう、嫌いな色として上位に挙がるのもピンク色なので、「こんなにもわたしが嫌いなピンク色が人気だなんて嘘に決まっている」と思ってしまう人がいるのも無理はない。

その上でこういう見解なんだねぇ…いやぁ、何というか…
 
さて、ココロ社さんは、

これらの製品、とくに家電などは、中年男性がデザインの決定に深く関与しているというイメージが強いこともあってか、「どうせ女の人はピンクが好きなんでしょ」という傲慢な感覚のもとに作られたような気がしてしまうし、勢い余ってそこにジェンダーの問題を見出すこともあるかもしれない。

と仰るが、

「女性向け」というお題目で受けた仕事でも、プレゼン段階でクライアントの女性たちに紺・茶がウケてても経営層(おっさん)に見せた瞬間に全部ピンクに差し替えとかデザイン業超あるあるなので…
「ピンク=女性向け」? - Togetterまとめ

時間もなかったため、そのどうしようもない
「経営側のオッサンが考える『若い女の子向け』デザイン(かなりダサい)」
が採用となってしまった。
 デザインは手に取る・使う人のためにあるべきものだし、デザイナーなら誰しもそれを一番に考えているのに、結局ターゲットであるはずの「若い女の子」の真逆と言っていい「老眼進んだオッサン」が気に入るデザインをつくらざるをえなかったのだ。
てゆーか、なんで女デザイナーがつくったモノをオッサンに「女の子向けじゃない」とか言われなきゃいけないんだよ!
脱ダサピンク宣言ーその1 | Short Note

「ダサピンク現象」についての一番最初の記事でも紹介したこれらのサイトでは、「女性向け」ということでデザイナー職の女性たちが考えたデザインを、上層部のおっさんが「女性ならピンクだろ」と言ってダサいデザインに差し替えてしまうことが、「イメージが強い」や「気がしてしまう」ではなく、「デザイン業界にいる女性が、実際に体験したこと」として語られている。念の為に言うと、これらのサイトは一番最初の記事でも紹介した。大事なことなので二度言いました。
「ダサピンク現象」に関する記事を書いてからは、twitter上でもこのような反響があった。

 
なんか、前回記事の冒頭に書いた通りになってるね。「女性って恋愛モノでイケメン出てるドラマが好きなんでしょ?」という程度の認識で作られたドラマがコケる話については、今のところ反論は来ていないから、たぶん理解できる人が多いんだと思う。でも、ピンク商品の話になると、途端に理解できなくなる人がチラホラいる。
これは、大半の人は子供の頃からテレビドラマを見慣れているので、ドラマの話については、ドラマのつまらなさは「恋愛モノ」「イケメン」以外の、もっと根本的な部分にあるということが、殆どの人にとって理解できることだからだろう。だから「恋愛モノやイケメンが嫌いな女がケチつけてるだけで、実際は需要があるんだ」なんて的外れなことは言わない。でも、女性デザイナーが作った女性向けデザインに、おっさんが「女性ならピンクだろ」と言ってダサいデザインに差し替えることが下地になっている話に対しては、「でも実際、女性にピンクは人気あるんだよ」「ピンクが嫌いな女がケチつけてるだけ」みたいな、的外れなことを言う人がいる。
ダサピンク現象、書いてみたら、特に「ピンク色の商品の場合」については、思ったより根深い認識の問題があるらしいということがわかってきた。これ、単に男性から女性への思い込みというだけでなく、それが思い込みだと指摘されても、尚「ピンク嫌いな女がケチつけてるだけで、実際にピンクは女性に人気があるんだ」と、的外れなことを言う人がいるという問題がある。
 
「女性って、皆が皆恋愛モノが好きなわけじゃないよ」「確かに、恋愛モノは女性から一定の支持を得ているかもしれないけど、『女性って、恋愛モノでイケメン出しときゃ良いんでしょ?』っていう意識で作られたつまらないドラマは、支持されないよ」「ていうか、『恋愛モノが好き』な層が、必然性もないのに恋愛要素入れてみただけのドラマで満足するわけないでしょ」「つまらない恋愛ドラマを観るくらいなら、『半沢直樹』や『相棒』を見るよね」「『チャーリーズ・エンジェル』みたいなアクションものだって、女性人気あるよ」といった話に対して、「でも、マーケティング的には、恋愛モノが支持されているっていうのは正しいんだ!」って言って、延々「女性は実際に恋愛モノが好き」を解説されても…みたいな感じ。挙句の果てには「お前が恋愛モノが嫌いだからといって、全ての女が恋愛モノが嫌いなわけじゃないんだぞ」とか言い出した、みたいな。
まぁしかし、もし、これまでの人生でドラマというものを見慣れていなくて、「ドラマとして面白いかどうか」という部分がわからない人がいたとしたら、こういうふうになってしまうのかもしれないな。いや、問題は「わからない」ということではない。自分にはドラマのことはわからないということを自覚していれば、余計な横槍を入れずに、わかる人に任せる、という判断ができるだろう。しかし、「ドラマとして面白いかどうか」という評価軸が存在すること自体がわからない、自分にはわからないということがわからない、という状態だから、口を挟んでくるのだろう。こういう人に、「この世には、ジャンル以前に、『ドラマとして面白いかどうか』という評価軸があるんですよ」ということを理解してもらうのは、大変難しい。
 
「ダサピンク現象」の反響の中には、「行政や地方自治体が主催する『萌えで街興し』が、わかってない人がやってしまって盛大にコケるのと一緒か」と解釈してる人がけっこういたけど、まさにそれ。これにも何か名前付けたいよね。確かに、最近はアニメマンガが人気だし、「萌え興し」で人気になった成功例も沢山あるけど、これじゃないんだよ!という。
こういう「コレジャナイ」企画・商品が作られてしまう場合、単に現場にわかる人がいないからそうなってしまうことが多いと思うけど、「ダサピンク現象」を起こしてしまうおっさんの場合は、現場に自分よりもわかる人がいるにも関わらず、その人を「わからない人」だと思い込み、なぜか、自分のほうが女性デザイナーより、ターゲットの女性の好みがわかるはずだと思い込むということから起こっているため、より問題が根深いのかもしれない。「いや、そういうのは可愛いものが好きな女子から見てもダサいって言ってるんですけど…!」「実際に街中を歩いている女性たちが身につけているピンクの割合見てみなよ…!」って言っても、こういうおっさんには、言葉が通じないのね。
でも、例えば、自分ではゴスロリ・ファッションを着なかったとしても、アキバ系界隈やV系界隈や原宿界隈に身を置いていれば、稲田大臣がゴスロリのつもりで着てきたものがゴスロリじゃないことがわかるくらいの「ゴスロリリテラシー」は身につくように、女子界隈に身を置いていれば、自分では可愛いピンクを身につけなかったとしても、その辺のおっさんよりは「可愛いピンク・リテラシー」が身についていたとしても、おかしくないんだよね。

稲田朋美クールジャパン大臣の「ゴスロリ」についての勘違いっぷりが酷い - NAVER まとめ

 
ダサピンク現象の最も身近であるあるな例としては、「お父さんが娘に買ってきた服がダサい」だと思う。「女の子だからピンクだな〜」と思って買ってきたら、娘はピンクより水色が好きとか、ピンクが好きだったとしてもそういう服じゃないとか。
ここで、仮にそのお父さんが、「だって、今時の女の子だって、ピンクが好きだっていう子が多いじゃないか!アンケートにもそういう結果が出てる!」とか言ったとしても、服自体がダサくては意味がない。お父さんがまずリサーチすべきだったのは、「今時の女の子の服の傾向はどういったものか、どういうブランドの服が好まれているのか」だったのだ。もっとも、この問題の一番良い解決方法は、お父さんが「自分が選んだらどうしてもダサくなる」と判断して、娘に金を渡して選ばせることだけどね。
 
あと、ブコメのほうで

Delete_All 素晴らしい記事だ。嫁さんの持ってるピーチジョンのカタログはマジでピンクの割合が高かった気がする。
http://b.hatena.ne.jp/entry/kokorosha.hatenablog.com/entry/2014/12/06/233142

って言ってる人いるけど、それはピーチ・ジョンだからだよ!ピーチ・ジョンは「PEACH(桃) JOHN」というブランド名だけあって、他と比べてもピンク率が高いブランドだから。ランジェリーだって、「ラ・ペルラ」や「オーバドゥ」のような高級ブランドから、イオンのワゴンセールでバラ売りしているものまで様々だから、一つのブランドだけを見て「女性ってこういうのが好きなんだな」って判断できるもんじゃないよ。
ちなみに、ピーチ・ジョンは最初からピンク好きの女子をターゲットにしているので、「LIZ LISA」や「Angelic Pretty」と同様、ダサピンクではありません。
 

全 然 違 う 。

http://www.avenuemagazine.com/2011/05/chic-of-the-week-carmen-dellorefice/
(※画像の女性は80代モデルのCarmen Dell'Orefice。超イケピンク!)
ていうか、最初から

って言ってるのに、どこをどう読んでるんだか…
でもまぁ、この「ダサピンク現象」問題、反響を読んだ限りでは、こちらの意図を汲み取ってくれている人が殆どなので、ここまでわからない人は、チラホラ見かけるけど全体としては少ない、という感じはしましたね。
 
あと、マーケティング的なことを言うなら、「何色が好き?」という質問に答えたアンケートの結果よりも、実際に女性にどれだけピンク色の商品が売れているのかというデータのほうが、私は信用度が高いと思う。「ピンクが好き」と答えた女性が、実際にバッグを買う時には、茶色や紺や黒を選んでいるというのは、よくあることだから。
 
石川県の「加賀ロリプロジェクト」。伝統工芸とロリィタ・ファッションのコラボで街興しをした例。

 
 
〔追記〕

続きを書きました。
続々々・「ダサピンク現象」について―ピンクは「無難な色」なのか?

続・「ダサピンク現象」について―だから、「ピンクが嫌い」って話じゃなくてさぁ…

前回記事『残念な女性向け商品が作られてしまう「ダサピンク現象」について』を書いたところ、思いの外反響があって驚いた反面、私の言ってることを誤解している人もチラホラいるようなので、続きを書いておく。
 

そう?元記事の人からはピンクに対して憎しみすら感じたけど
おっさんが勝手に決めてるだけで女性はピンクなんて好きじゃないくらいの勢い
実際は女性が好むから用意してるってことを主張したかった、嫌がらせで出してるわけじゃなくてマーケティングもした結果なんだと
http://anond.hatelabo.jp/20141124040100

この人に限らず、チラホラこういう捉え方をしている人がいたけど、あの内容でなんで私がピンクを憎んでるっていう話になるんだろう… 「『ピンク=ダサい』という意味ではない」「肝心のデザインがダサいから」「ピンクで可愛くてフェミニンなものを好む層は一定数いる」「でもそういう人はこだわりを持っているから、ナメてかかってはいけない」って書いたはずなのに。もっとも、「私はピンク好きだけど、おっさんが想像してる『女性ってピンクにしときゃいいんでしょ』的なものはいらない」という内容の反響も沢山あったので、その人たちには意味は通じていたのだろう。
「ドラマの中で必然性もないのに出てくる恋愛要素はいらない」「恋愛モノだろうがイケメン入れようが、ドラマとして面白くなければ観ない」という話に対しては、「恋愛モノに対する憎しみを感じる」「イケメンに対する憎しみを感じる」と言う人は、今のところ見かけていないけれど、ピンク云々に関しては、「ピンクに対する憎しみを感じる」と言う人がチラホラいたのは、なかなか興味深い現象だ。どちらも同じことを言っていたはずなのに。ダサピンク現象と創英角ポップ体問題の根は深いらしい。
もちろん、何種類かカラーバリエーションを用意しておく中にピンクが入っているのは、様々なジャンルの映画を用意しておく中に恋愛モノも入っているのと同じで、何も問題はないよ。
 

「自動車メーカーの男性社員は、女性は丸っこくってピンク色っぽいかわいい車が好きだと決めつけてきましたが、とんでもない誤解でした」
アンケート用紙に、女性たちの信じられない本音が記されていたのである。
「黄色ナンバーだからってナメられたくない」
「信号待ちで登録車に負けたくない」
女性は「かわいい車」に乗りたがり、走行性能には興味がないというのは完全に男の思い込みにすぎなかったのだ。実際、N−ONEの総販売台数のうち、実に30%がターボ付きだという。
ホンダのNシリーズが女性に大ウケ 「かわいいピンク好き」はとんでもない誤解 (1/4ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

これに関しては、「その『女性』というのは、一体、どの年齢層の、どういうタイプの女性を想定しているの?」と聞きたくなってくる。自動車ということは、ターゲットは18歳以上の女性であるはずだ。
では、具体的に「丸っこくってピンク色っぽいかわいい車」が似合いそうな18歳以上の女性芸能人を思い浮かべてみると、きゃりーぱみゅぱみゅ道重さゆみ小倉優子柳原可奈子、かつみ・さゆりのさゆり、アジアンの馬場園、千秋あたりだろうか(田村ゆかりは17歳なので除外)。どうなんだろう。この女性たちは、「女性一般」を代弁していると言えるだろうか。むしろ、けっこう個性的な面々だと思うけど。そして、「ピンクで可愛いものは好きだけど、ダサいものは嫌」という意識を持っていそうな女性たちでもあると思う。
では、多部未華子北川景子水原希子、AI、土屋アンナ澤穂希鳥居みゆき篠原涼子荒川静香といった女性たちはどうだろう。彼女たちには、どういうデザインのものが似合うだろうか。
こういうふうに考えていくと、「丸っこくってピンク色っぽいかわいい車」は、決して女性一般に当てはめられるものではなく、「そういうのが似合うタイプの女性もいる」程度でしかないということになってくるだろう。
 

 浅木たちのチームは、綿密な市場調査やクリニックと呼ぶユーザーを交えた検討会など、市場との対話を繰り返した。そして、そこから軽のメーンユーザーである母親たちの潜在ニーズがうっすらと見えてきた。

 自転車で通学している中学生や高校生の娘がクラブ活動や塾で帰りが遅くなると、心配になった母親はクルマで迎えに行く。だが、ほとんどの軽は、女性の力では自転車を積み込めなかった。娘は翌日に自転車がなくては困るので、親の言うことを聞かずに夜道を無理して自転車で帰ってくる−。

 こんな不満を母親たちは持っていた。しかも軽には自転車が積み込めないものと初めからあきらめていた。
想定以上に売れた「N BOX」 危機に見舞われると強くなる“ホンダイズム” - SankeiBiz(サンケイビズ)

上の例では、ターゲットを、漠然とした「女性」ではなく、「部活帰りの子供を迎えに行く母親」という具体的な像で捉えたことにより、ダサピンク現象が回避されている。

 角利産業は女性向け工具の開発もしています。性能と軽さに配慮したのはもちろんですが、実は、一番の売り物は「シンプルな木目の柄(え)」。商品企画室の森山隆之さんは「自分好みにデコレーションできるように余白がほしいと教えてもらいました。意見を聞かなければ、うっかりピンクにするところでした」と話します。

 複雑な女性の心をうまくキャッチした新潟の逸品が生まれています。
【特選!ふるさと元気の素】DIY女子向け工具、ツボは何? - SankeiBiz(サンケイビズ)

こちらも、実際に女性の意見を聞いてダサピンク現象を回避した例。記事の結びが「複雑な女性の心を」となっているけれど、ここは「DIY好きの女性の心を」と言ったほうが良いんじゃないかと思う。DIY好きだから、工具の柄も自分で改造したいということなんだろう。もっとも、仮に改造を施さなかったとしても、ピンクよりもシンプルな木目のほうが好きだという女性も沢山いると思うけどね。
両者に共通しているのは、「女性」向けであるということ以外に、「部活帰りの子供を迎えに行く親」「DIY好きの人」という、具体的なターゲット像を持ったことによって、ダサピンク現象を回避したことだ。これは、前回記事で書いた「その層(ピンクで可愛くてフェミニンなものが好きな人)を狙い撃ちすることを意識して作られたものと、漫然と『女性ってピンクでかわいいものが好きなんでしょ?』という認識で作られたものは、やはり違うと思う。」ということに繋がってくる。つまり、具体的に「ピンクで可愛くてフェミニンなものが好きな人」をターゲットにして作られたピンク商品は、ダサピンクではないということだ。私は、「LIZ LISA」や「Angelic Pretty」のピンクワンピースに対して、「女は全員ピンクが好きだと思うな」と言っているのではない。こういったブランドは、ターゲット層の好みを押さえた商品を作っていて、最初からそれ以外のものを好む女性は切り捨てているからだ。

 

脱ダサピンク宣言ーその2 | ShortNote

こちらの記事は、「生理予測アプリ」「女性向け スマートフォン」「女子力」で画像検索した結果と、実際に女性からの支持を受けている「ことりっぷ」「OZマガジン デザイン」で画像検索した結果を比較しているのだけれど、私も実際に自分で画像検索してみたところ、前3つのキーワードは本当にピンクピンクしていて、予想以上の結果だった。
ダサピンク商品は、車、家電、携帯などの電子機器、ロードバイクなどのスポーツ用品でよくある気がする。一方、服飾方面はというと、「バッグ レディース」「トップス レディース」「靴 レディース」などのキーワードで画像検索してみると、ピンクもあるけれど、全てがピンクというわけではなく、色々なカラーバリエーションがあるというような結果になる。「女性誌」で画像検索してみても、ピンクもあるけれど、ほぼ全てがピンクということにはならない。ピンク系の色が多いと思われるネイルの分野でも、かなり様々なカラーバリエーションがある。
女性は、好きな色も、似合う色も、けっこうバラバラだし、確かに可愛いものが好きな女性は多いけど、大人っぽいもの、クールなもの、シンプルなもの、エレガントなものを好む女性だって多い。歳を重ねるにつれて、好みや選ぶものが変わっていったりもするしね。
 
ところで、一昔前には、赤もまた女性を表す色として強く認識されていたと思う。私が子供の頃は、ランドセルの色は黒と赤のほぼ二種類だけで、ピンクはまだまだ珍しかったし、幼少期に見た子供向けテレビ番組の中にも、赤い上着を着ている男の子が「女の色だ」とからかわれ、そこから「男の色、女の色とは何か」という話になっていく内容のものがあった。東京五輪の時には、選手が開会式に着た真っ赤なブレザーに、「日本男子に赤い服を着せるなんて何事だ。けしからん」と抗議が来たという。
女児だけでなく、大人の女性も含めて「女性向けといえばピンク」と強く意識されるようになったのは、もしかしたらわりと近年のことなのではないだろうか。代わりに「赤=女性」という意識は、以前ほどではなくなってきていると思う。一方、「黒=男性」という認識は、男性向けスイーツのパッケージがやたら黒いことを見ると、今でも変わっていないのかもしれない。
一方、近年は水色も女の子の人気色だけど、これはサンリオのキャラクター「シナモン」の影響が大きいだろう。
 
まぁピンクって難しい色だよね。私は、サーモンピンクのような黄味がかったピンクや、彩度の高いショッキングピンクや、ベビーピンクのような色味の薄いピンクは、あまり似合わないらしい。モーヴピンクあたりなら使える。実際、メイクにはモーヴピンクを使うこともある。でも、服や小物に関しては、ピンクのものはほとんど持っていない。ネイビーやワインレッドなどの色のほうが、自分に似合うタイプのピンクよりも出回っているので、あえてピンクを選ぶ必要性を感じないんだよね。私は大人顔なのだが、落ち着いた大人っぽいピンク商品というものがなかなか無く、それならば別のもののほうが良いということになるので、自然と手に取る機会がなくなってしまうのだろう。
大人のピンクいえば、淡谷のり子氏が、晩年に「私もピンクが似合う歳になりました」と言った逸話があったけど、確かに、髪が白くなると、これまでよりも明度の高い色が似合うようになるのはあると思う。
 
【ダサピンク現象関連リンク集】

とりあえず「ピンク」って、手に取りにくい - 田舎で底辺暮らし

セブン銀行女性向けキャッシュカードのデザイン投票の件。典型的なダサピンク現象。これ確か、4番の黒い「フォーチュン」がダントツの1位で、2位が1番の「フラワー」だった。

女性が働くことを「女性が輝く」って表現するの、「キラキラ差別」に似てるよね。家事育児をする男性も応援してあげて!

ところが、セミナーの副見出しに
「目指せ!理系マドモワゼル!!理系女子力UPセミナー」
「可愛くおしゃれに理系を目指してみませんか?」
とあって、なんか「??」だったりします。
それともお客さんを増やすために、
あえて奇抜な演出をしたのでしょうか?
理系マドモワゼル

理系女子学生を増やそうという企画に「美人理系マドモワゼルが魅力教えます」「可愛くおしゃれに理系を目指してみませんか?」などといった見出しをつけるのも、ダサピンク現象の一種だ。一方、「東北大学 女子学生入学100周年記念事業の応援メッセージ」は、ダサピンクになっていない例だと思う。

私はこのスースー感が大っっっ嫌いです。男性用洗顔料にメントールが入っている理由はわかります。洗顔した後にスースーすると、俺は顔の汚れをキレイに洗い落としたぞ!という満足感が生まれるんです。

でも、私はそれが駄目なんです。メントールによる「スースー感の押し売り」を、否が応にも感じてしまいます。「どうせ男はスースーしてるのが好きなんだろ?ほら、メントール入れといてやったからwwww」みたいな。
「男性用洗顔料はスースーさせとけばいいだろう」問題について / あるいは僕が最高の洗顔を探し出すまでの軌跡 - 更地

男性版ダサピンク現象の代表格は、男性用化粧品がやたらスースーすることと、男性向けスイーツのパッケージがやたら黒いことだと思う。
 
キューティ・ブロンド」の原題って、「Legally Blonde」だったのね。

 
 
〔追記〕

続きを書きました。
続々・「ダサピンク現象」について―上層部のおっさんの「無知の知」という問題

残念な女性向け商品が作られてしまう「ダサピンク現象」について

最近、Twitterで「ダサピンク現象」という言葉がちょっと広まって、(一応)名付け親である私としては嬉しいのだけれど、誤解している人も多そうなので、この辺りでエントリを書いてまとめておこうと思う。
 
「ダサピンク現象」は元々この辺りの話から始まった。

「ピンク=女性向け」? - Togetterまとめ

ここでは、「女性向け」ということでデザイナー職の女性たちが考えたデザインを、上層部のおっさんが「女性ならピンクだろ」と言ってダサいデザインに差し替えてしまうことや、実際に街を歩いている女性の服装のうち、ピンクの割合はどれくらいだと思ってるんだとか、一口にピンクと言っても色々なピンクがあり、おっさんが思う女性向けピンクと、実際に女性から好まれるピンクは違うとか、そういう話が展開されている。
 
それを受けて、私はこういうTweetをした。

なぜ出来が残念な結果になるのかというと、「女性ってピンクが好きなんでしょ?」「女性ってかわいいのが好きなんでしょ?」という認識で作られた商品の場合は、「肝心のデザインがダサいから」であり、「女性って恋愛要素入ってるのが好きなんでしょ?」「女性ってイケメンが出てくるのが好きなんでしょ?」という認識で作られたドラマの場合は、「肝心のストーリーがつまらないから」である。
もちろん、女性の中にも、ピンクで可愛くてフェミニンなものが好きな人は、一定数いる。だが、こういう好みを持った人たちは、パンクファッションが好きだったりモード系が好きだったりするのと同じようなもので、当然、全ての女性に当てはまるわけではないし、自分の好きなものに対してこだわりを持っている。ピンクで可愛くてフェミニンなものが好きな層にアプローチするのは、パンクファッションが好きな層にアプローチする時と同じで、ナメてかかってはいけない。その層を狙い撃ちすることを意識して作られたものと、漫然と「女性ってピンクでかわいいものが好きなんでしょ?」という認識で作られたものは、やはり違うと思う。
 
ドラマでも、恋愛モノが好きな人は一定数いる。だが、恋愛モノが好きな人たちは、ドラマの中で必然性もないのに出てくる恋愛要素に、満足したりするのだろうか。もしこれが、ホラー好きな層やアクション好きな層にアプローチしようとする場合は、がっつり本気でホラーものやアクションものを作ろうとすると思う。恋愛モノが好きな層にアプローチするのなら、当然、がっつり本気で恋愛を描いたものになるだろう。むしろ、恋愛モノが好きだという人ほど、ドラマの本筋とは関係ないのに入れてみただけの恋愛要素なんて、ないほうがマシだと思うのではないだろうか。
アラサーちゃん 無修正』第一巻の中に、「アラサーちゃん、チーズケーキ好きなんでしょ?買ってきたよ!!」「チーズケーキを愛しているからこそ… コンビニで100円で売ってるパッサパサのチーズケーキもどきは食べたくないのに!!」というネタがあったが、そういうことだと思う。
イケメン俳優に関しては、たぶん、その俳優のファンで、出ているドラマを全部チェックしているとか、そういう人でない限り、イケメン俳優が出ているというだけでは、あんまり見ないんじゃないかな。
 
ピンクというのは、実のところ、「女性が好む色」というよりは、「女性(用)であることを表す色」なのではないだろうか。信号の赤が「止まれ」、青が「進め」を表しているように、ピンクは、女であることを表す記号としての色なのではないだろうか。

海外の反応 - 日本のアニメ・キャラクターは白人に似せているわけではありません!

上の記事では、ただの棒人間を見ると、人は、その人の国で「標準」とされている人種だと認識してしまう現象が説明されている。白人社会の人は、ただの棒人間を見ると、それを白人だと認識してしまい、これを別の人種だと認識するには、棒人間に何か別の要素を付け加える必要があるように、人種的特徴のないアニメ・キャラクターを見ると、白人社会の人は、それを白人だと認識してしまうということだ。
これと同じことは性別でも起こり得ると思う。私たちの社会では、ただの棒人間を見ると、これの性別は男だと認識してしまう人が多いんじゃないだろうか。棒人間を女だと認識するには、リボンなり長い髪なりスカートなり、何か女であることを表す要素を描き足す必要がある。つまり、私たちの社会では、「標準」の性別は男だと認識されているのではないだろうか。
こうした認識があるがゆえに、わざわざ女性向けのものを作ろうとする時に、わかりやすい記号としての「ピンク」を使ってしまうのかもしれない。この場合、デフォルトの商品は、男性向けまたは性別を問わないものと認識されているのだろう。反対に、化粧品やスイーツなど、デフォルトが女性向けとされている商品の場合、男性向けに作る場合は、わざわざ男性向けであることを強調するようなデザインになってしまうのはあると思う。
 
あと、多くの人が「男性」と聞いて思い浮かべるものが、性別的な意味での男性であるのに対して、多くの人(とりわけ男性)が「女性」と聞いて思い浮かべるものが、若くて可愛い女性だというのも、ダサピンク現象の原因になってると思う。一体、若くて可愛い女性は、女性全体の何%なのか。若くてイケメンの男性が、男性全体を表しているわけではないように、若くて可愛い女性も、女性全体を表しているわけではない。
おっさんの頭の中にあるステレオタイプな女性像に向かってデザインされているのであって、実際の女性に向けてデザインされているのではないことが、ダサピンク現象を生む原因になっていると思う。もっと言うなら、「女性にはこういうデザインを好んでいて欲しい」という男性の願望が、ダサピンクなデザインに反映されている部分もあるのではないだろうか。
ちなみに、中原淳一は、淡紫(藤色)を「最も女性的な色」と言っていた。
 
【ダサピンク現象関連リンク集】

脱ダサピンク宣言ーその1 | Short Note
脱ダサピンク宣言ーその2 | ShortNote

「ダサピンク現象」という言葉を取り上げて書かれたエントリ。女性デザイナーが女性向けに作ったデザインに、おっさんが「女性向けじゃない」と言ってダサピンクに差し替えた話や、「生理予測アプリ」「女性向け スマートフォン」などのキーワードで画像検索した結果と、実際に多くの女性から支持を受けている「OZマガジン」「ことりっぷ」などとの比較について。

絵日記★「ダサピンク」描いてみた!|カキレイ★ブログ -「性同一性障害」(FTX)や「無性愛」エッセイweb漫画とオタク日記-

「女性をターゲットにした家電の取り扱い説明書」を想定したダサピンクデザインの例。

「わたしたちはClueを開発するとき、何百人もの女性の意見を聞きましたが、誰もアプリがピンクであるべきだと考えていませんでした。実際、ユーザーのほとんどが、Clueのデザインはより大人っぽく、スマートで、すっきりしているという感想を述べてくれます」
排卵期予測アプリ「Clue」がデザインにピンクを使わない理由 « WIRED.jp

「自動車メーカーの男性社員は、女性は丸っこくってピンク色っぽいかわいい車が好きだと決めつけてきましたが、とんでもない誤解でした」
アンケート用紙に、女性たちの信じられない本音が記されていたのである。
「黄色ナンバーだからってナメられたくない」
「信号待ちで登録車に負けたくない」
女性は「かわいい車」に乗りたがり、走行性能には興味がないというのは完全に男の思い込みにすぎなかったのだ。実際、N−ONEの総販売台数のうち、実に30%がターボ付きだという。
ホンダのNシリーズが女性に大ウケ 「かわいいピンク好き」はとんでもない誤解 (1/4ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

半沢直樹」は、これまでのドラマ界の常識で考えると、登場人物に女性が少なく、わかりやすく視聴率を取れるキャラクターもおらず、恋愛もないという「ないないづくし」。それに銀行という“男”の世界が舞台です。セオリーどおりなら、ドラマのメインターゲットと言われる女性は「見ない」ということになりますよね。
(中略)
でも、いざ、フタを開けてみたら、女性が見ていた。テレビの常識がいかに適当だったか、マーケティングというものがいかにアテにならないか、ということでしょう。
監督も想定外!「半沢直樹」メガヒットの裏側 | あのヒット番組、作ったのは私です。 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

ドラマ「半沢直樹」に関しては、おじさんの「女性ってこういうのが好きなんでしょ?」が良い感じに排除され、ドラマそのものの面白さが追求された結果なんじゃないかと思っている。「相棒」もこの手のドラマかと。ただ、半沢の妻「花」の描写に関しては、原作のキャラクター設定を全く変えてしまったせいか、おじさんの旧い女性観が反映されてしまい、ドラマの中でも浮いていたと思う。
 
ところで、以前、NHKのテレビ番組「週刊ニュース深読み」で、昨今の消費しないと言われる若者の消費を促すにはどうしたら良いのかというテーマで話し合っていた時に、最後の最後で、ある女性出演者が「せっかく若者向けに良い提案をしても、上のおじさんに潰されてしまうんですよ!」と言っていたが、これはまさしくダサピンク現象と同じ構造だと思った。結局、日本の企業の上層部がおじさん社会で、女性向けにしろ若者向けにしろ、おじさんに受け入れられる企画しか通らないことが問題なのかもしれない。
 
―映画「パリの恋人(Funny Face)」より「Think Pink」―

 
 
〔追記〕

続きを書きました。
続・「ダサピンク現象」について―だから、「ピンクが嫌い」って話じゃなくてさぁ…

内診は性行為と同じ―私をレイプしない産婦人科医が良い

日本の子宮がん検診受診率は先進国の中でもダントツに低い20%台前半です。
婦人科腫瘍専門医の友達が、その専門医試験の面接で言われたところによると、

子宮がん検診の受診率は啓発では上がらない

のだそうです。啓発をしている者としては大変悲しいですが、やっぱり、検診が大事だと分かっていても別のところにハードルがあるという人は多いのだと思います。そして、「まあ自分は大丈夫だろう」と思ってしまう・・
子宮がん検診のハードルを下げる方法|宋美玄オフィシャルブログ「〜オンナの健康ラボ〜」Powered by Ameba

子宮癌検診のハードルについては、私もハードルを感じる者の一人として、以前から色々と思うことがあったので、書いてみる。
 
まず、どうすれば自分は内診を受けようという気になるか、ということを考えてみると、緊急を要する場合ならば、諦めて医師の前で股を開く覚悟はできたとしても、そうでない限りは、いきなり初対面の医師相手に股を開くことはしたくない。まず婦人科医に色々相談に乗ってもらって、自分がその婦人科医を信頼できると判断した段階になってから、はじめて内診台に上がりたいと思っているのだが、よく考えてみたらこれはセックスと同じだ。
股を開いて膣に何かを突っ込まれるという点では、セックスも内診も同じだ。信頼関係が築けた相手でないとなかなか難しい。その信頼関係というのは、「この人は、私の心と体を乱暴に扱ったりはしない」というものだ。ということは、有無を言わせぬ態度で内診台へ上げられてしまい、いきなり膣に何かを突っ込まれるのは、レイプと一緒ということになる。産婦人科への心理的ハードルというのは、言ってみれば、医師から性暴力を受けるのではないかという不安感だったのだ。
「行かないと大変なことになるよ!」と啓蒙することは大事でも、産婦人科に対する心理的ハードルを下げないことには、婦人科へ行く人は増えないんじゃないかと思っていたけれど、つまりそれは、病気になるリスクと、性暴力を受けるリスクを天秤にかけて、後者のリスクを回避している人が多いということになるのではないだろうか。そう考えると、受診しない人たちは、ある意味合理的な選択をしていると言える。

具体的な支援者による暴力のサイクルとして、マツウラ氏は「脅す」→「あぶり出し、呼び寄せる」→「支援/支配する」というモデルを提示している。まず「脅す」では、例えば母親に対して「DVを目撃した子どもたちは女の子なら将来被害者に、男の子なら将来加害者になる」と繰り返し言ったりして、支援者のもとに来て支援を受けるよう圧力をかける。
DV被害者支援を志す人はマツウラマムコ著「『二次被害』は終わらない」に絶望せよ

これはDV被害者支援の話だけれど、これと同じようなことが、子宮癌検診の啓蒙でも見られると思う。もちろん、病気のリスクについて啓蒙することは大事なことだけれど、「内診=性行為」と考えるならば、「行かないと大変なことになるよ!」という言い方で啓蒙するのは、「脅して、呼び寄せ、性行為を受け入れさせる」ということになり、これはけっこうレイプ的だと思う。「脅し」や「不安感」よりも、「安心感」のほうを提示して欲しい。
 
内診の心理的ハードルの高さの中に、「医師に言われたら、断りにくい」というものがあると思う。私は、内診を受ける際は、内診する必要性について、きちんと説明を受けて自分で納得してから、内診台に上がりたいと思う。相手の医師が私の意志を尊重してくれる人だった場合は良いけれど、そうでなくて、碌に説明もせず「はい、下着を脱いで、ここに上がって」みたいに言われてしまった場合、私はそれを断れるのかと考えると、なかなか難しいと思う。
私たちが何かを断れるのは、それを「断っても良い」という教育を受けているからだと思う。望まぬ性行為を断れるのは、親や社会から「これは断っても良いことだ」という教育を受けてきたからだ。「断る」という行為は、幼い頃からその行為を学習し、「これは断っても良いことだ」と、腹の底から信じられるようになって、できるようになるのだと思う。逆に言えば、頭では理解していても、腹の底から信じることができなければ、人はなかなか断れないと思う。なぜなら、「断る」という行為は、相手を不機嫌にさせる可能性が高い行為だからだ。養育者から性的虐待を受けて育った人は、性行為を断る能力が十分に身についていないことが多いという。「性行為を断ってはいけない」という教育を受けてきたからだ。
そう考えると、私は、医師が碌に説明もせず内診を受けさせようとした場合、「NO」と言う教育を受けてきていないのだと思う。理屈で考えれば、説明を求めたり断ったりしても良いのだとわかる。でも、腹の底から「これは断っても良いことだ」と思えていないということなのだろう。「医師の性暴力的な態度に対しては、NOと言っても良い」という社会的な合意形成が欲しい。
 
私は、子宮癌検診の受診率を上げるためには、まず産婦人科に対する抵抗感をなくし、産婦人科の受診率を上げることが必要だと思う。「内診=性行為」ということで捉えるなら、「子宮癌検診に来て」と言われるのは、いきなり「セックスしに来て」と言われるようなもので、ハードルが高い。「産婦人科に来て」と言われるほうが、ハードルが低いと思う。
そのために、社会全体で、「生理が来る年齢になったら、産婦人科に行くのは当たり前」という意識が根付いて欲しい。成人してから行く習慣を身につけるのは、なかなか難しいと思う。日本では、産婦人科のことを「性行為経験のある人が行くところ」だと思っている人が多いと思う。これは、「婦人科疾患=性行為が原因でなるもの」という偏見があるからだろう。子宮頸癌の原因になるヒトパピローマウイルスは、性行為で感染するものだけれど、カンジダ膣炎子宮内膜症など、性行為経験のない人でもなる病気はある。産婦人科が、10代の女性や性行為経験のない女性にとって、とてもハードルが高いところになっていることも、問題だと思う。
子宮癌検診を啓蒙することも大事だけれど、学生とその親御さん向けに、「生理が来たら産婦人科へ」という啓蒙を、ばんばんやって欲しい。テレビで、生理痛が酷くて保健室で休んでいる女子学生に、養護の先生が婦人科に行くことを勧めて、後日女子学生が友達と一緒に婦人科を訪れるとか、そういう内容のCMを流して欲しい。こうすることによって、10代の女性に対して婦人科へのハードルを下げるだけでなく、全ての世代の人に「今の時代は、生理が来る年齢になったら、婦人科へ行くのは当たり前なのね〜」と思わせて、10代で婦人科に来ている子への偏見をなくし、前世代的に婦人科に対するハードルを下げることも狙うのだ。「今はそういう時代だから」ということにしてしまえば、10代女性だけでなく、その上の世代の女性たちも行きやすくなると思う。
まぁ、この手のことを呼びかけると、「10代の女の子に産婦人科なんかに行ってほしくない!」ってゴネ出すおっさんが出てきそうだけど、「将来、子供が産めなくなる可能性があるから〜」とか言って、黙ってもらおう。
 

 どうして、欧米各国の子宮頸がん検診受診率は高いのか―。その答えを探していたところ、スペインの婦人腫瘍学の医師で、政府の医学・医療分野の顧問も務めるハビエル・コルテス・ボルドイ氏(Javier Cortes Bordoy,MD)の発表で大変興味深い話を聞いた。ヨーロッパの女性の半数以上には、10代のころからかかりつけの産婦人科医がいて、その医師や母親が女性の健康教育に重要な役割を果たしているというのだ。

 つまり、性体験のないころから、かかりつけの産婦人科医がいて、診察や検査を受けるのが当たり前のように考えられていることがうかがえる。

 日本は子宮頸がんとHPVに関する知識がないから、検診受診率が低いのだろうか。

 前出のボルドイ氏の調査によると、ヨーロッパの女性で「子宮頸がんはHPVというウイルスの感染によって発症する」と答えられた人は1〜3割程度だった。つまり、欧米では子宮頸がん検診受診率は高いものの、子宮頸がんとHPVに関する知識のある人は少ないといえる。

子宮頸がん検診の受診率を高めるために日本は何をすべきか:がんナビ

産婦人科に行くのが当たり前の欧米において、子宮頸癌についての知識が十分でなくとも受診率が高いのは、頷ける話だ。なぜなら、日本においても、内科や耳鼻科や眼科には、疾患の知識が十分でなくとも、特に抵抗感なく行く人は沢山いると思うからだ。知識に訴えて効果が見込めるのは、そもそも受診に抵抗感がない場合なのだろう。産婦人科に行く習慣が土台だとすれば、日本は、そもそも土台固めができていない状態と言えるのではないだろうか。
「子宮がん検診のハードルを下げる方法」とは、実のところ、「産婦人科に行く習慣を身につける方法」なのかもしれない。ここ10年で精神科に対するハードルは随分下がったと思うけど、産婦人科もそれぐらい下がって、生理が来る年齢になったら産婦人科にかかるというふうになって欲しい。日本が先進国の中で子宮癌検診の受診率がダントツに低いということは、何かしら社会的な原因があるからであって、検診を受けないのを個人の意識のせいにするのは、少子化について社会背景を論じずに「女性が悪い」「若者が悪い」と言い出すのと同じだと思う。
また、産婦人科に行って嫌な思いをした人が、その後産婦人科に行きたくなくなるのは、男性からセクハラや性暴力の被害に遭った人が、男性恐怖症になるのと同じで、ごく当たり前のことだと思う。そこで「でも、産婦人科に行かないと、病気のリスクがあるでしょ」と言っても、そんなことは本人も既にわかっていることなのではないだろうか。むしろ、「産婦人科に行かないと病気のリスクがあるが、でも産婦人科に行けない」というのが、本人が抱えている問題なのではないだろうか。性暴力被害に遭った人にとって、「男性に慣れないと通常の社会生活が営めないが、でも男性が怖い」というのが、本人が抱えている問題なのと同じで。産婦人科で嫌な思いをした人に対しては、セクハラや性暴力の被害に遭った人と同様のケアや対応が必要だと思う。

pixivにおける「腐女子自重」の空気は、元々の同人界隈のものではなく、2chの影響説

集団投稿 - FC2

いわゆる「腐女子テロ」騒動について。上のリンクは、BL作品の集団投稿企画主催者のサイト。
まず昨年11月頃、pixivやニコニコ動画などの各種SNSサイトにおいて、利用規約に違反しているわけでもないのに、BL表現だけが、なぜか「自重」を求められるような空気があり、そういう空気に疑問を持った人たちが、「腐向け」などのタグを入れずに、日時を決めて集団で作品を投稿しようという趣旨の企画が持ち上がったところ、「はちま起稿」で「腐女子が集団テロを計画中」というタイトルを付けて取り上げられ、「腐女子が無差別にホモ絵をばら撒くらしいぞ!」という雰囲気で拡散していき、主催者のなりすましアカウントが作られる、pixivでBL絵と見せかけてクリックしたら死体画像が表れるものが投稿されるといった嫌がらせが相次ぎ、今年4月11日の企画実行当日には、Twitter上で「主催者は、その期間のBL投稿は参加者と見做すと言っている」というデマを呟く者が出て、その日のNHK「つぶやきビッグデータ」には、かなり大きく「腐女子」の文字が出た。しかし、外野でこれほど大騒ぎになったわりには、主催者の報告によれば、当日pixiv上で投稿した作品については、特に何も問題は起きなかったという。
以上が、この件について私が知っているだいたいの大まかな経緯である。
ちなみに、「BL」とは、ものすごくざっくり説明すると、主に女性に愛好者が多い、男同士の恋愛を描いた作品である。よく誤解している人がいるのだが、「BL=エロ」でも「BL=二次創作」でもない。BLは全年齢のものからR18のものまであり、一次創作もあれば二次創作もある。二次創作の中にも、公式が二次創作を許可しているものや、著作権が切れたものもある。
 
さて、今回の出来事で私がすごく疑問に思うのは、「pixivやニコニコ動画において」BL表現を自重する必要があるのか、ということだ。pixivもニコ動も自由な創作の場で、リアルに例えるなら、オールジャンル同人イベントや同人投稿雑誌のようなものだろう。
ネット普及以前の同人界隈では、そんなに801やBLのみが、他ジャンルに遠慮して隠れなければならないような空気はなかった。一般人(オタクじゃない人)に対しては「バレちゃいけない!」と隠れるようなところは確かにあったが、そこは腐女子に限らずオタクは皆そうだった。アニメディアファンロードといった雑誌でも、投稿者は女性が多かったし、腐女子は自重なんてしていなかった。そういった雑誌を持っていることを隠している人は多かったけれど。
つまり、腐女子が隠れていたのは、あくまでも同人界隈の外、一般社会に向けてであって、同人イベントや同人系の雑誌などの場では、全く隠れていなかった。だから、ニコ動やpixivみたいな場で腐女子が自重を求められるのは、すごくおかしなことだと思う。
 
私の認識としては、一般社会における腐女子は、まず2005年の「電車男」で男性オタクの存在がマスメディアで取り上げられ、その後腐女子が世に知られる、という流れで、世間に認知されるようになり、2007年前後の時点で、ある程度存在が知られてしまったという気がする。その頃までは、マスメディアで腐女子も含めたオタク的なものが面白おかしく取り上げられることも多かったが、やがてそれも飽きられた後、「かなりの一大文化らしい」「海外にも広がっているらしい」と認識されて、「クールジャパン」とか言われて、お偉いさんたちがオタク文化でお金儲けしようとしているのが現在、ということになると思う。
最近では、同人の世界が面白おかしく取り上げられることも、だんだん少なくなってきて、コミックマーケットが開催されていることが朝のニュースになって、普通にコスプレイヤーさんたちがテレビ画面に映され、アナウンサーが「こういったものも、今や日本の一大文化ですからね」とコメントするような時代になった。その代わり、「同人は儲かる」といった誤解もあるようだけれど。
というわけで、2014年現在は、腐女子の存在が、ある程度一般社会に知られてしまった後の世界なのだと思う。ある程度面白おかしく取り上げられ、ある程度飽きられた後。だから私は、もうそれほどBL表現とかで隠れなくても良いんじゃない?という気がしている。もちろん、激しい性描写はどんなジャンルでもゾーニングは必要だけど。
 
一方、同人界隈の流れとしては、ネット普及以前は、どのジャンルのオタクたちも地下深く潜っていたのが、ネットの普及とともに隠れきれなくなり、ニコ動、pixivときて、オタクがカジュアル化し、裾野が広がったという流れがあると思う。
それと共に、2ch的な「腐女子きめぇ」「女は出て行け」という空気が、本来オールジャンル創作の場であるはずのニコ動やpixivにまで持ち込まれるようになり、なぜか同人界隈の中ですら、BL表現を自重しなければならないように思っている人が増えてしまったのではないだろうか。
つまり、一般社会に向けてではなく、自由な創作の場であるはずのニコ動やpixivの内部ですら、BL表現を自重しなければならないというのは、特にネット普及以前から腐女子たちが守ってきたものなどではなく、実は、ここ10年ほどで形成された2chの空気でしかないのでは、と思うのだ。
そもそも2chだって、運営は誰でもいらっしゃいなスタンスだったのだが、まるで公園のジャングルジムを占領する子供のように、「腐女子は隠れろ」「女は出て行け」な空気が形成されてしまって、その2ch的な空気を、本来自由創作の場であるニコ動やpxivにまで持ち込んでくる人がいる、という感じがする。2ch的な価値観に浸かってしまうと、ネットのどこでも2ch的な価値観が通用するものだと思い込んでしまうところがあるのかもしれない。
だが、そもそもこういった同人創作活動をする人たちは、ずっと女性の割合が多かった。ニコ動やpixivを利用しているのに「腐女子は見たくない」などと言うのは、オールジャンル同人イベントに来て「腐女子は見たくない」と言うようなものだ。実際、集団投稿の主催者さんも、pixiv上では「腐向け」などのタグをつけずに投稿しても、何も問題は起こらなかったと仰っているのだから、騒ぎになっているのは主にpxivの外で、pixivにおいては、特にBL表現ということで自重する必要はないということなのだろう。

男女比については、2010年8月のコミックマーケット78での調査[20]によれば、一般参加者では男性64.4%、女性35.6%と男性の比率が高く、サークル参加者では男性34.8%、女性65.2%と女性の比率が高い。一方、2008年2月に準備会が公開した資料「コミックマーケットとは何か?」によれば、一般参加者は女性57%、男性43%、サークル参加者は女性71%、男性29%であり、当時の準備会は「世の中の認識とは異なり、女性の参加者が多い」と結論づけた。また、2004年8月のコミックマーケット66でのコミック文化研究会(九州大学助教授・杉山あかし)と準備会による試験的な計測では、男性がやや多いかも知れないという結果であった。
コミックマーケット - Wikipedia

 
一方、中国ではBL小説を執筆したことで、女性が少なくとも20人は逮捕されるという事件があった。

 当局は特に、男性同士による同性愛を描写した二次創作に注目している、と『The Daily Dot』は指摘している。これには、日本の「やおい」や「ボーイズラブ」も含まれる。

 同性愛を描写した二次創作が、普通のロマンス小説よりも過激であることは、まずない。しかし、中国当局は、同性愛をテーマにした二次創作を、過激なネットポルノとして取り締まっている。
中国当局、BL小説執筆で女性20名を逮捕  “同性愛差別”と中国ネット上で批判も | ニュースフィア

日本でも、2008年、堺市図書館が「市民」の声を受けて、現行の法律や条令でも「18禁」に当たらないBL図書を、18歳未満の利用者への貸し出しを制限する措置を取るなどして、問題になったことがある。私はこの件がきっかけで「図書館の自由に関する宣言」を知った。
 
何にせよ、男と女がキスしている表現を隠さなくても良いのなら、男と男がキスしている表現だって、隠さなくても良いはず。BL表現だからという理由で自重する必要はないというのは、そういうことだ。
 
 
今回の集団投稿に関する記事へのリンク。

【メモ】今、腐女子を考える。集団投稿企画に賛同する「自重しない腐女子」とは【1】 | Fujo2

アンチ腐女子を煽動するアフィブロガーと、ゴキ腐リの提唱者「罵詈」 - hompig

オタク女叩きはアフィブログの飯の種 - hompig

第42回 “腐女子テロ”とはなんだったのか〜自重ルールの5つの理由|2CHOPO 読みもの