大きな花見会場・小さな花見会場

私のお気に入り花見スポットは、とある場所にある、こじんまりとした神社。ここはせいぜい近所の人しか行かない。出店もなく、音楽もかけず、静かでのんびりとした雰囲気が好きだ。近所に図書館があるので、そこで本を借りて来て、神社の階段に腰掛けて読みつつ、持参した御茶やお菓子を食べるのが、だいたいの毎年の過ごし方。
　
ところが、この神社は数年前から、スピーカーで何やら和風の音楽を流すようになった。出店を出して、境内にステージを設置して、ミニコンサートをやるようになった。
神社側には悪いけど、私はがっかりした。そんなことは、大きな花見会場でやってりゃいいことであって、こんな小さな神社でやることないじゃないか。スピーカーだって、会場が広いから設置するのであって、こんな小さな場所じゃただうるさいだけだ。しかも調整が悪いのかノイズが酷い。時々キーンという音を出している。
　
私は、この神社の静かな雰囲気が好きだからここに来ていたのね。そういうことされると、ここに来る意味がないんだよ。小さな神社が、他所の大きな花見会場と一緒のことをしたら、大きな花見会場のほうが良いってことになるじゃない。大きな花見会場は、色々な種類の桜を植えていたり、有名な和太鼓チーム呼んだりと、小さな神社以上に見せるもの持ってるんだからさ。
　
というわけで、その神社にはここ2年ほど行ってなかったのだけれど、今年行ってみたら、時節柄の自粛なのか、たまたま今年からもうやめようということにしたのか、スピーカーも出店も無くなっていて、元の静かでのんびりとした花見会場になっていた。
　
ああ、これこれ、これが良いんだよ。スピーカーでわざわざ音楽流すことなんてないんだよ。耳に聞こえる音なんて、鳥の鳴き声で十分なんだよ。小さな花見会場だからこその良さってのがあるんだよ。
それにしても、自分の魅力が自分でわからなくて、目立つ他人の真似をして、かえって元から持っていた魅力を損なってしまうというのは、個人に限らずよくあることなんだなぁ。
　
今年は、その花見会場の桜の根元でトカゲを見ました。トカゲって瞬きするんですね。