yuhka-unoの日記

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支配者は、一見正しく愛情深そうな人に見える

13歳の息子へ、新しいiPhoneと使用契約書です。愛を込めて。母より(Hana.bi) - BLOGOS(ブロゴス)

iPhoneの使用契約書の記事を読んで感動する人は親になる資格などない。

 
うん、私もこの契約内容は気持ち悪いと思った。表面的な契約内容の項目だけを見ると、この母親は一見正しいことを言っているように見える。でも問題はそこじゃない。問題はこの母親の根底にある「行動原理」だから。
例えば、「他人への思いやりから気を配る人」と「他人から嫌われたくないために気を遣う人」は違う。「子供に、子供本人にとってより良い道を歩んで行って欲しい親」と「子供に、親を安心させるための行動を取って欲しい親」は違う。「子供にとって良い親であろうとする親」と「自分自身を良い親だと思っていたい親」は違う。
でも、表面上に現れる行動だけを見れば、両者には共通するところも沢山あるんだよね。そこが厄介なところで、無自覚に子供を追い詰めてしまう親が、表面上、すごく正しいことをしているように見えることは多いし、ともすると、普通の親より愛情深い良い親に見えることもある。これが、誰が見てもわかりやすく子供を抑圧する親なら、周囲の人間も子供の味方をしてあげられるし、子供自身も「親はおかしい。自分は悪くない」と思える。でも、一見すごく正しそうに見える親の場合は、周囲から見れば、愛情深い良い親と、その親の気持ちを無視する我侭な子供というふうにしか見えず、周囲の人間から「親の言うことをききなさい」と言われてしまって、子供はますます追い詰められる。子供自身も、「自分がこんなにしんどいのは親が原因だ、親がおかしいんだ」と思うのが難しい状態になる。
 
私がこの契約内容から読み取ったメッセージは、「私はあなたを信用していない。信用していない。全く信用していない」「でもあなたは賢い子だから、お母さんの言うことが聞けるでしょ?」「でもあなたは、言うことを聞かない。言うことを聞かない。絶対約束を破る」「約束を破ったあなたは、悪い子。悪い子。悪い子」「でも私は、あなたを愛しているのよ?本当はあなたに良い子になって欲しいのよ?」だった。これが、表面上は正しそうに見える契約内容の根底にある、この母親の「行動原理」だと思う。
かなりの憶測であることを承知で書くけれども、この母親は、子供が自分の目に見えるところで、自分の望む行動をしていないと、安心できない、逆に言うと、自分の目が届いていない時の子供を、全く信用していないし、きっと親が望まないようなことをしているに違いないと決めつめてしまうタイプだと思う。
この「行動原理」、あるいは「裏メッセージ」とでも言うものは、一見普通の人、ともすると愛情深くて正しそうに見える人から滲み出る「ドロッ」としたもの、そんなふうに感じ取れる。でも、この「ドロッ」は、こういう人に実際に接して「ドロッ」の毒気に当てられた人でないと、なかなかわからないものがあると思う。
 

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ぼく個人的に言うと、心情的には後者のこの匿名さんの記事に近い部分がある。正直な話をすれば、元記事の18か条は文体もあいまってすこし気持ち悪い。

けれど、気持ち悪いことと正しいことが両立する場合もあるのが世の常で。

書き方がちがっていたら、もしかしたら積極的に支持していたかもしれないし、このお母さんはそんな的外れなことをいっているようには、どうしても思えないのだ。

もしこの母親の「行動原理」が違うものだったら、書き方も違ったものになっていただろうし、その場合は私も賛同したかもしれない。
私は、「気持ち悪い」と感じた自分の直感は、大事にしたほうが良いと思っている。例えば、自分を騙そうとしている人や、自分を誘拐しようとしている人などは、一見「正しいこと」を言っているように見えるし、「そんな的外れなことをいっているようには、どうしても思えない」ように見える。だから、その人の話を聞けば聞くほど、自分が間違っているんじゃないかという気がしてくるし、そうこうしている間に、言いくるめられて、逃げる機会を奪われて、自分の領域に侵入されて支配されてしまうから。
何かしら滲み出ている「ドロッ」を感じたら、その人からはすぐに逃げたほうが良い。世間には「論理的=正しい・感情的=間違っている」という価値観があるけれど、自分の身を守るためには、自分の感情的な直感を信じることだと思う。
 
一見正しそうなことを言って、相手に「自分がおかしいのかもしれない」「自分が間違っているのかもしれない」と思い込ませて、逃げ場を塞ぎ、「あなたのためなんだよ」「あなたを愛しているからなんだよ」「あなたに良くなって欲しいから言ってるんだよ」と言うのは、支配の常套手段だ。こういう人に絡め取られてしまうと、自分の判断能力を信じられなくなって、なかなか自分の意思では逃げられなくなってしまう。
 
 
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