yuhka-unoの日記

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音楽業界のブームのゴリ押しは、着物業界の凋落に似ている

私の個人的音楽史と、現代の日本音楽業界について思うことを書いてから、また色々と思うところがあったので、続きを書くことにした。
 
フジテレビの韓流ゴリ押し騒動について、フジテレビと韓国の裏の関係を想像する人がいるようだが、私は単に、国内で仕入れてきたものを押し売りするか、海外から仕入れてきたものを押し売りするかの違いでしかないと思っている。商品そのものはあまり関係がなく、売ってる人の都合だろう。
大して売れてもいないものを「売れている」「今人気」「あの有名な」などと言って売ろうとする手法は、「皆さん買っていらっしゃいますよ」と言って浄水器などを買わせようとする訪問販売の手口に似ている。
私の個人的音楽史と、現代の日本音楽業界について思うことでも書いたが、私は、ネットに触れてから自分好みの音楽に出会えるようになり、CDもよく買うようになった。私の弟はインディーズバンドのライブに行くのが趣味で、CDもよく買っている。
少なくとも私と弟に関しては、最近よく言われている「若者の音楽離れ」「CDが売れない」は当てはまらない。草の根レベルでは、まだまだ音楽に近付いていく若者だっているのだ。ただ、やはり二人ともメジャーからは離れてしまっている。
 
この構図は、着物業界の凋落の過程に似ているのではないだろうか。
高度経済成長期の頃、庶民はそれまで憧れだった高級な着物を買えるようになった。その流れに乗った着物業界は、着物を「格式高いもの」として売り出し、着物は一種のステータスとして位置づけられていった。当時はその手法で着物業界は潤ったが、反面、「着物は難しくて大変」「着物は敷居が高い」というイメージを植え付けてしまい、それはやがて着物が敬遠される原因となってしまう。
着物バブルが弾けた時、着物業界は、本当ならここで「着物は気軽に着れるものですよ」という方向に転換するべきだったのだろう。だが着物業界は、今までの「格式高いもの」として売る手法を、より強化させる方向に行ってしまった。その結果、着物業界は無理な押し売りをして、世間に「着物=押し売り・悪徳商法」のイメージがついてしまい、ますます大衆から敬遠されるようになってしまった。
一方最近は、比較的若い層で、草の根レベルで着物愛好家が増えている。しかし、そういう人たちは、高尚なステータスとして高い着物を着るのではなく、普段着として気軽に着物を着たいと思っているから、結局旧来型の呉服屋には近付こうとしない。新しい層の着物愛好家は、主にアンティーク着物やリサクル着物を愛用している。
 
人間は、長期的には自分の首を絞める行為だとわかっていても、目先の利益があるうちはなかなかやめられない。
成功体験に囚われてしまうと、環境が変わっても、今までのやり方を強化する方向で乗り切ろうとしてしまい、結果もっと状況を悪化させてしまう。
今の状態が苦しく、それまでのやり方はもう通用しないとわかっていても、やり方を変える手間と覚悟より、今までのやり方を続ける楽さを取ってしまう。
業界内バブルは、バブルの間に「誰かの上に立てる」という偽のプライドを植え付けてしまい、「良いものを、押し売りせず、適正価格で」という本物のプライドを失わせる。
偽のプライドはバブル崩壊を招き、崩壊後も偽のプライドが環境に合わせた変化を拒み、「ゴリ押し商法」へと走らせ、更に衰退を早める原因となる。
 
以上のことは、着物業界と音楽業界の共通点だと思う。
現代の若年層は、親の世代で既に着物離れが起きており、着物に近付いてすらいなかった層だ。その中から草の根レベルで着物に興味を持つ人が現れている。音楽も、草の根レベルで興味を持つ若者はなくならないと思うので、いずれは着物のように草の根レベルで賑わっているものになるのかもしれない。
 

フジテレビは韓流ドラマでも何でも自由に流せばいい (1/2) : J-CAST会社ウォッチ
http://www.j-cast.com/kaisha/2011/08/02103168.html
 
自分たちの高給に手をつけるでもなく、それに見合ったクオリティのコンテンツを作るでもなく、ただ安いからという理由で買ってきた輸入品を、

「うわあ面白いですねえ、いま大ブームですねえ」

とばかりにマッチポンプで宣伝しまくるのは、はっきりいって見苦しい。
(中略)
ただ一つ言えるのは、顧客が欲しいものではなく、自分たちにとって都合の良いモノを優先する企業は、長期的には必ずパイを失うということだ。

フジテレビの「韓流ゴリ押し」が批判されて炎上している理由 – ロケットニュース24(β)
http://rocketnews24.com/2011/08/09/119606/
 
・善し悪しの判断は消費者がするもの
韓国タレントだって、韓国商品だって、韓国ゲームだって良いものはたくさんあります。今回のフジテレビの「韓流ゴリ押し」騒動は、もともと良いとされていた韓国商品をも傷つける事態に発展しています。韓国ドラマも韓国ゲームも良いものならば大歓迎。マスコミがそれらを知るきっかけを与えてくれるのは嬉しいのですが、それ以上のゴリ押しは消費者をバカにしていることにもなります。商品に対する良いかどうかの最終的な判断はマスコミがするものではありません。その判断は消費者に委ねられるべきものなのです。