yuhka-unoの日記

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マイノリティにとっての匿名社会

ネットは匿名であるべきか実名であるべきかという議論は、前々からなされているが、けっこう見過ごされがちで、でも見過ごしてはならないのは、同性愛者、性暴力被害者、虐待被害者、いじめ被害者、ひきこもり、ニートなど、実社会で差別と偏見に晒されている人たちのことだ。このような人にとっては、匿名で話せる場はとても大切なものだ。差別や偏見は、実質的に言論の自由を奪う。
もしネット社会が実名でなければならないとなってしまったら、ストーカー被害者などは、一生ネットで発言することができなくなってしまうだろう。
こういう人たちが自分の悩みや意見を表明することができ、また、こういう人たちの悩みや意見を知ることができるというのは、匿名の大きなメリットだ。
 
ネットは実名であるべきだと考え、自身も実名で発言している人からすると、匿名を良いことに無責任に放言する人は腹立たしいと思う。自分はリスクを背負って発言しているのに、相手は大したリスクも無く暴言吐いておきながら、実社会では何の影響も受けず、失言してもアカウント消してしまえばおしまい。自分は匿名の相手に傷つけられたのに、相手は何も傷つかずに実社会の生活を営んでいる。確かに私も、こういう人は腹立たしく思う。
 
でも実際は、匿名であっても傷つくことはある。匿名ならば、家に押し掛けられたり近所の人に噂話されたり仕事辞めさせられたりすることは滅多にないが、匿名の社会で差別や偏見がなくなるわけではないからだ。
むしろ、匿名だからこそ無遠慮に差別心垂れ流す人は多いしね。そして、差別心垂れ流す人は、自分が「そういう立場」だと表明している人のところに、蝿のように群がって行くからね。
 
私のネット上の名前は、実際の私のものではないが、私が抱えている悩みや意見は、確かに実際の私のものだ。
ネット社会を実名化するというのなら、まず実社会で差別や偏見をなくし、実質的に言論の自由を確保する努力が必要だろう。もちろん、ネット社会がどうであれ、そういう努力が必要なのは言うまでもないが。マイノリティだって、本当は実社会で、身の危険や不利益を被ることなく、安心して発言できるようになりたいんだよ。