yuhka-unoの日記

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ビールとワサビ―若者の嗜好の変化について―

私は酒に弱いのでそんなに飲むことはないのだが、味の話をするなら、チューハイやカクテル、日本酒や焼酎、ウィスキーやブランデーは好きなのに、なぜかビールだけはダメだ。ビールだけは美味しいとは感じない。
しかし、同じビールでも、ギネス・スタウトを飲んだときは「これはそこそこイケる」と感じた。つまり私は、日本で一般的に流通しているタイプのビールが特にダメだったというわけだ。
よりにもよって、飲み会で「とりあえずビール」と言って出てくるような酒に限って舌が受け付けないとは…
 
さて、若者のビール離れや、「とりあえずビール」という習慣が無くなった若者のことについての話は、ネット上でもよく見かける。その理由の一つとして、「若者は甘党になった」「苦いものが受け付けなくなった」…要するに「若者は大人の味がわからなくなった」とでも言いたげな分析が多く見られるが、これについては私は疑問に感じている。最近は焼酎ブームがあったし、その前には激辛ブームがあった。私の周囲では、若者が特に苦いものや辛いものを避けているという印象は受けない。
 
ではなぜ年長者たちは、「若者は甘党になった」「若者は大人の味がわからなくなった」という印象を受けるのだろうか。私は、これについてはむしろ逆で、「若者世代が苦いものを避けている」というよりは、「年長者世代が甘いものを避けている」からだと思う。
年長者世代には、「スイーツ(笑)は女子供の食べ物。大人の男は甘いものは食べない」などという謎価値観が存在している。それゆえ、年長者世代の男性の中には、本当は甘いものが好きなのに、見栄や体面から人前で甘いものを食べず、「大人の味」とされる食べ物ばかりを食べてしまう人もいるのではないだろうか。
若者世代には、こういった価値観は無くなってきている。見栄を張らず、自分の好きなものを食べるようになった結果、年長者よりは甘いものを食べる人が可視化されるようになっただけにすぎないのではないか。つまり、味覚が変わったのではなく、価値観が変わったのだ。
 
また、同じようなことがワサビでも起こっているようだ。

はてなブックマーク - 味覚:「辛み」「苦み」若者敬遠 好みは「マイルド」、成熟せず成長か - 毎日jp(毎日新聞)
http://b.hatena.ne.jp/entry/mainichi.jp/life/food/news/20100205ddm013100131000c.html

元記事は既に消えているが、『このエントリーを含むエントリー』から記事の内容を読むことができる。

回転ずし「くら寿司(ずし)」を全国展開するくらコーポレーション(本部・堺市)は数年前から、全皿をサビ抜きにし、テーブルに備え付けのわさびを好みで付けてもらう仕組みにした。広報宣伝部の中野浩さんは「子ども連れのお客様からサビ抜きの注文が多く、実験的に数店舗で別添えにした。わさびを使わない人が予想以上に多く、順次、全店に拡大した」と説明する。導入後、若い男性のグループ客の一人から「今までは頼みにくく我慢していたが、実はサビ抜きが食べたかった」という反応もあったという。

これが全てだと思う。若者は味覚が変わったのではなく、「サビを抜き頼むのは格好悪い」というような見栄を張らなくなったのだろう。
 
そもそも、飲み会での「とりあえずビール」や、寿司に最初から入っているワサビのように選択肢が無い状況では、個人個人の「好み」などわからないだろう。体面を気にせず色々選択できるようになったことで、はじめて個人個人が本来持っている「好み」が可視化され、従来から潜在的に存在していた層が現れただけに過ぎないのではないだろうか。