yuhka-unoの日記

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「普通」に依存する母と、「普通」にできない父の浮気

父の「浮気」は悲しい出来事だったし、それで両方の親が私に愚痴ってきたことは、親としてやってはいけないことだったと思っている。だが、父が浮気したことそのものは、今では、父はもしかしたら、そうするしかなかったのかもしれない、それは最初から必然だったのかもしれないとも思う。
母は「普通」に依存する人で、自分のテリトリーを「普通の幸せ」「普通の家族」に保っておかないと安心できない人だ。その母の「普通」に、私は付き合いきれなくて、壊れてしまったわけだから、私以上に普通にできない父なんて、もっと母に付き合いきれないんじゃないか、もし付き合い続けたら、やっぱり壊れてしまうんじゃないかと思う。
 
父から、母と結婚した時のことを聞いたことがあった。父が母と出会って付き合っていた頃、父は前職で腰を痛め、また勤めていた企業が倒産しそうだということもあって、前職を辞めて絵の勉強をしようとしていた頃だった。なので、母と結婚することに対して、「やっていけるのか」と不安を感じていたらしい。父は母に「上手くいったら結婚しよう」と言ったそうだ。「そんなプロポーズの言葉があるか」と母に言われたと、父は言った。
そんな状態だったので、父は当然、子供を持つことにも不安を感じたらしい。長子の私が生まれた時、生まれたこと自体は嬉しかったが、同時にプレッシャーを感じたという。その上、母が私に兄弟を作ることを望んだので、ますますプレッシャーを感じたらしい。弟たちが生まれた時にあまり嬉しそうにしなかったことを、後で母に責められたと言っていた。
「お母さんは、『普通の幸せ』が夢だったのかな」と、私は父に尋ねた。「そう思うよ。『普通の家庭』『普通の幸せ』が欲しかったんだと思う」と、父は答えた。
 
後日、私は母に、父と結婚した時のことを聞いてみた。「向こうが『結婚しよう』って言ってきたから」というのが、母の答えだった。私が「お母さんは、『普通の家庭』が夢やったん?」「そんな状態で、子供を作ることに不安はなかったん?」と尋ねると、「夢…? 夢っていうか…普通は結婚したら子供を持つもんやと思ってたし…」という答えが返ってきた。
なんとも話が噛み合わない。父と母の話から確実にわかることは、この二人は、最初から話し合いの出来ない夫婦だったということだ。
 
ただ、この話から推測するに、結婚を望んでいたのも、子供を作ることを望んでいたのも、母の方だったのではないだろうか。プロポーズも、父のほうから積極的にしたというよりは、母の望みを父が汲み取るような形でして、それを母は、自分の望みではなく、父が望んだから結婚したのだという認識でいるのではないだろうか。私は、父が『甘やかされているようで全然甘えられていない子供たち』で書いたような、他人に合わせてもらわないとやっていけない性格なので、母が父に合わせているものとばかり思っていたが、実は父が母の『普通』に合わせようとしていた部分も多かったのではないか。そんな疑念が湧き上がってきた。
なぜなら、このプロポーズの経緯と母の認識は、『「普通」の親が子供を追い詰める』で書いた、私の進路を自分の望み通りに誘導し、私の口から「行きたい」と言わせて、自分は「子供の自主性を重んじる親」だという認識でいた、母のやり方と同じだからだ。もしこの推測の通りなら、私が自分と母との問題に気付いた時に思った「父は中ボスで、母がラスボスだった」という認識は、当たっていたということになる。
 
父はその後、絵で食べていくことはできなかったが、かといって『普通』にできない人なので、集団の中で働くような会社員にはなれず、自営業をすることになった。そして、自分の事務所に勤めていた女性を愛するようになり、それが直接の原因で両親は離婚した。
母は、もともと私を自分の代用物のように扱うところがあったが、離婚後はさらに私に依存するようになり、本来父に求めるべきことを私に求めてきた。また、私の「女の子」の部分に甘え、私が母の気持ちをわかって全面的に味方して当然だと思うようになった。
だが、私は兄弟の中で、見た目もそうだが能力的にも父に一番似てしまった。父が母の『普通』の枠に収まりきらなかったように、私も母の『普通』の枠には収まりきらなかったのだ。
 
たぶん父は、無意識的に母から逃れたのだろう。父は大人で母より強いから、母から逃れることができたが、母より弱い立場の私は、逃れられずに壊れてしまった、ということなのかもしれない。
母は父のことを、「あんな女ったらしだとは思わなかった」と言った。しかし、私はそうは思わない。「女ったらし」というのは、女をとっかえ引っ変えするような人のことで、父の場合はそうではないからだ。父は、その人とずっと付き合い続けている。たぶん死ぬまで付き合い続けると思う。そういうことなのだろう。
 

見えないからブラックホール -あなたの子どもを加害者にしないために
 
父が敵。
母は好き。


父は身勝手。
母はかわいそうな人。


父は専制君主。独裁者。
母はかしづく人。


父は家では何もしない人。
母は働き者。


父は無骨。
母は社交家でいい人。



…どれほど見てきただろうか…。
ブラックホールは、見えないからこそブラックホールという。

 
 
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